意味がないのに横行「アイデア出し会議」のムダ 「忖度や同調圧力」という名のヤスリで削られる

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「常識」をまずは疑ってみる。

日本では「そんなの当たり前だ」「みんなやっているでしょ」と言われると、それに従わなければならない空気になります。これこそ枠にとらわれる発想です。

当たり前や常識は国によっても、時代や年齢によっても違います。

それを認めず、無理やり枠に押し込めようとする勢力は思考停止しているようなものです。そんな勢力に負けずに抗わないと、「問題発見」はできません。世の中の当たり前を壊すのが、問題発見をするためのファーストステップです。

私はネスレの社長になってから、さまざまな当たり前を壊してきました。

入社式をやめた理由

そのうちの1つが入社式です。

皆さんも、入社式の記憶などほとんどないでしょう。入社式では社長が訓辞を垂れるのを、皆同じようなスーツを着た新入社員が聞いているのが一般的です。その時に聞いた話を翌日まで覚えている人はほとんどいないはずです。

私はこんなセレモニーは意味がないと入社式をやめ、その代わりに3月から新入社員に研修を始めて、4月頭に発表してもらう場を設けました。

それはイノベーションアワードの簡略バージョンのような研修で、人事部が考えてテーマを出します。

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例えば、「現在、ネスカフェを高齢者も若い人も飲んでいません。どのように解決しますか?」のように。

新しい現実と、そこから生まれた顧客の新しい問題を考えて、それに対する解決策をチームごとに発表します。それを私や役員で審査しました。

それまで学生だった社員は消費者に近いので、コーヒーを飲まない人の気持ちが分かります。だから、ベテラン社員が考えるより、「なるほど」と思うようなアイデアが出ていました。

新入社員も研修を通して同期と親しくなれますし、ネスレが何を重視していて、仕事で何を望んでいるのかを実地で学べるので、入社式よりもよほどためになると思います。

このように、世の中で当たり前に行われていることを、「これには何の価値があるのか?」「なくしたらマイナスなことがあるのか?」と疑うと、当たり前の壁を突破できます。

高岡 浩三 元ネスレ日本社長

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たかおか こうぞう / Kozo Takaoka

ケイアンドカンパニー代表取締役、元ネスレ日本代表取締役社長兼CEO。1983年、神戸大学経営学部卒。同年ネスレ日本入社。各種ブランドマネジャー等を経て、「キットカット」受験生応援キャンペーンや、新しい「ネスカフェ」のビジネスモデルを提案・構築。2010~2020年までネスレ日本CEO。2020年4月より現職。現在は、DXを通じたイノベーション創出のビジネスプロデューサーとして「高岡イノベーション道場」を主催し、自ら後進の育成に取り組む。著書に『ゲームのルールを変えろ――ネスレ日本トップが明かす新・日本的経営』(ダイヤモンド社)、『逆算力』(日経BP社)、コトラー氏との共著で『Marketing in the 21st century』他多数。

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