誤解が多い「日本の生産性」低位が続く意外な盲点 「人への投資」だけを推し進めても意味がない

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1つ目は無形資産投資が増えていることである。1990年代後半にアメリカでIT革命が起きてから、ソフトウエアや人材投資をはじめとした目に見えない投資が増えている。株式市場はこの投資による収益の増加を評価しているが、公表される企業の財務諸表にはこうした資産のほとんどは計上されていない。したがって、株式市場での評価を基準にした企業価値と、会計上の投資の変動に乖離が生じるのである。

2つ目は市場集中度が上昇し、新規企業の参入や新規投資が行いにくくなったという点である。アマゾンもグーグルも1990年代に創業した当初は、比較的小規模なベンチャー企業だったが、今やどの企業も太刀打ちできないほどの市場支配力を持っている。リーディング産業におけるこうした独占力は、その企業の利益を増大させ、株価を引き上げる一方で、経済全体の投資を縮小させる効果を持っている。

3つ目は、海外直接投資の影響である。先進国の市場はすでに成熟しているため、企業は成長著しい新興国に投資をしてきた。こうした海外での投資は企業に収益をもたらし株価を引き上げるが、国内投資は振るわないという現象が起きる。

日本を見た場合の最大の要因は?

日本の場合を見てみると、無形資産投資の増加については、ある程度あてはまる。しかし、その無形資産投資額も2010年代からは横ばいになっており、あまり有形資産の投資をカバーする力はなさそうである。逆に人材投資は長い期間をとってみると減少しており、それが増加する企業価値と建物や機械などの投資の停滞とのギャップを埋めているとはいいがたい。

2つ目の市場集中度の上昇は、日本では一般的には見られない。しかし情報通信サービス業では、大企業と中小企業の生産性との差が見られることは確かである。この背景には、少数の企業が大きなシステム投資の受注を行い、それを中小の企業に請け負わせるという建設業に似た構造があると考えられる。こうした構造によって情報通信サービス業の投資や生産性が上昇してないという側面はある。

しかし日本の場合、この2つよりも大きな要因は、3つ目の海外直接投資であろう。すでに収益源が国内よりも海外になっている企業が多数あり、さらに為替要因が加わっている。すなわち、アベノミクスによって異次元の金融政策が開始されたことにより円安が進行した。この円安が海外の収益を国内の通貨で評価した場合にさらに増幅させることになり、企業価値を押し上げ、低迷する国内投資とのギャップを拡大しているのである。

実はこの最後の3番目の問題は、地方経済にも暗い影を投げかけている。徳井丞次・信州大学教授と牧野達治・一橋大学経済研究所研究員が最近延長された都道府県別産業生産性データベースを使って都道府県別の研究開発に伴う知識ストックを調べたところ驚くべき結果が出ている。

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