誤解が多い「日本の生産性」低位が続く意外な盲点 「人への投資」だけを推し進めても意味がない

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国内における生産設備や研究開発への投資を増やし、生産性への向上につなげていくにはどのようにすればよいのだろうか。頼るのは、今回の台湾の半導体メーカーTSMCの進出のような海外からの直接投資だろう。

もともと直接投資というのは、経営能力の海外移転として捉えることができる。日本が好調であった時期には、日本の生産プロセスを海外に移転することが移転元、移転先双方にとって好ましいことであった。日本の経営能力が有意な分野が少なくなった現在、今度は日本が直接投資を積極的に受け入れることが生産性向上、ひいてはこれからの成長のカギとなる。

海外直接投資を増やすための2つのハードル

ただし、こうした楽観的な期待には2つの注釈が必要になる。

1つは、従来から指摘されていることだが、日本では対日直接投資を実施する際の手続きが煩雑で、これが一種の参入障壁のようになっていた。このため日本への直接投資は中国や韓国よりも低い水準にあった。

もう1つは最近機運が高まっている経済安全保障による制約である。これにより、例えば半導体では外資メーカーが政府の補助金までもが受けられる一方で、ほかの分野では参入を拒否される企業も出てくる可能性がある。こうした政府の恣意的な介入が多くなると、対日投資は増えない。

手続きの煩雑さについては、当面の間はデジタル化を通して手続きを簡素化する方向で進めることが必要だろう。

経済安全保障による制約に関しては、短期間で容易に解決できる状況ではない。むしろこれまでのサプライチェーンが、自由主義経済圏を中心としたものに再編されていくとすれば、その再編過程の中で日本への直接投資が増えていくことを期待するしかないだろう。

宮川 努 学習院大学経済学部教授

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みやがわ つとむ / Tsutomu Miyagawa

1978年、東京大学経済学部卒業、1978年~1999年日本開発銀行(現日本政策投資銀行)勤務、1999年から現職。2006年経済学博士号修得。最近は生産性に関する実証研究に取り組む。著書に『生産性とは何か』(ちくま新書)、『インタンジブルズ・エコノミー』(淺羽茂氏、細野薫氏と共編、東京大学出版会、2016年)、『Intangibles, Market Failure and Innovation Performance』(Bounfour氏と共編、Springer、2015年)。

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