誤解が多い「日本の生産性」低位が続く意外な盲点 「人への投資」だけを推し進めても意味がない

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1995年の知識ストックは、東京を1とした場合、大都市近郊の滋賀県や神奈川県は東京都の9割程度の技術力を有していた。しかしそれから20年あまりたった2018年には、東京都の9割程度の技術力を有する都道府県はなく、2位の神奈川県ですら東京都の7割台にまで低下している。

背景にはおそらく、この間に企業の海外進出と国内工場の閉鎖が進み、同時に技術者も減少していったことがある。地方はこの製造業の事業所の減少を観光業の振興で補完してきたが、それも東京オリンピック・パラリンピック開催時期における新型コロナウイルスの感染拡大という最悪のタイミングに起きた災禍によって先行きが不透明になっている。

日本は研究開発への支援が足りない?

研究開発力に関してはこうした量的な蓄積に加えて質的な問題も指摘されている。スタンフォード大学のニック・ブルーム教授やチャールズ・ジョーンズ教授らは、研究開発投資の効率性の低下について検証した研究を発表している。彼らは、半導体の集積密度が1年半から2年で2倍になるというムーアの法則を達成したり、新薬を開発したりするためには、これまで以上の研究資源を投入しなければならなくなっていることを示した。

従来の研究開発に関する研究では、研究開発への資源投入量が多ければ多いほど生産性の向上が期待されるという結果が得られていた。しかしながら、彼らが示したのは研究開発投入量当たりの生産性向上分、つまり研究開発の効率性が低下しているために、従来と同様の研究開発資源を投入しても、従来以下の生産性向上しか得られないというものであった。

日本では研究開発への支援が足りないということがさかんにいわれている。しかしながら量的な指標で見ると、日本の研究開発費の対GDP比は長年3%以上を保っている。これは韓国の4%には及ばないが、2%台の欧米先進諸国よりも高い。それでも研究開発費が十分でないということは、革新的な成果を出すために従来以上の資金や資源投入を必要としているということなのだろう。

こうした状況下では、たとえGDP比率が日本より低くとも、GDP自体が急速に膨らんでいる中国の研究成果が存在感を増しているというのもうなずける。

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