誤解が多い「日本の生産性」低位が続く意外な盲点 「人への投資」だけを推し進めても意味がない

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投資には、潜在的な成長力(生産能力)を上げるという役割のほかにもう1つの側面がある。それは景気循環への影響である。

投資という行為は、建物を建築する資材を購入したり、機械設備を購入したりするため、財やサービスへの需要を増やすことになる。この支出の増加は、消費の増加や輸出の増加と同様景気にとってプラスに働く。生産能力の増加という供給面の効果と支出の増加という需要面の効果の双方を併せ持つことを「投資の二面性」と呼んでいる。

それでは投資が増加すればいいことづくめなのかといえば、そうともいえない。投資の増加は、景気を大いに盛り上げるが、いったん増加した生産能力は容易に減らすことはできない。このため、需要が減少した際には、企業は過剰設備を抱えることになる。バブル崩壊後の日本も大幅な過剰設備を抱えていた。

しかし生産性を向上させるためには、こうした設備の過剰を乗り越えて、新たな設備を導入していく必要がある。鉄道事業で自動券売機や自動改札を導入しなければ、生産性は向上しないし、小売業でも自動店舗やセルフ・レジのための機械の導入は、生産性の向上に貢献しているといえる。

今世紀に入ってからの日本は残念ながらこうした生産性向上のための投資がなかなか広がらず、逆に労働投入が増えて生産性の低迷が生じているのである。

株価が上昇する一方で設備投資が低迷

ただ不可解なのは、2010年代は企業の株価が大きく上昇した時期でもあった。ダウ=ジョーンズで見ても、日経平均株価で見ても、2010年代の初めから最後にかけて株価は3倍に上昇している。通常、企業価値が上昇するということは、投資家が設備投資から生まれる将来的な利益の増加を期待していることを意味している。

つまり一般的に株価と設備投資は歩調を合わせて動くものなのである。それにもかかわらず、2010年代は株価が上昇する一方で、設備投資が低迷するというパズルが生じていた。

このパズルを説明する要因として、先進国共通の要因としては3つ挙げられる。

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