一方、晴道は、男気あふれるまっすぐな性格の持ち主。航空自衛隊パイロットの道を進んだ後、一転して現在はセキュリティー会社に勤務しているという設定です。若き日の晴道には木戸大聖が抜擢され、佐藤健と同様に一途さを身体全体で表し、そのベタさがキュン度を加速させてもくれます。飛行機を操縦する姿も爽やかさを極めています。
また也英の息子役の荒木飛羽と、ダンサー役のアオイヤマダは感受性にあふれた演技で今どきの恋愛を切り取っています。ほか、主役を取り巻く登場人物には向井理に、夏帆、濱田岳、美波、中尾明慶、井浦新、そして小泉今日子が起用され、これまた配役の妙が光ります。小泉今日子が演じる也英の母親役は明るくお節介焼きという表面的な見え方だけでなく、無学で流されやすい弱さも見せ、人の複雑さを表す気になる役どころです。
デビュー曲「Automatic」流れる本編
では、宇多田ヒカルが本作とどのように関わっているのかというと、まず挙げられるのが作品タイトルです。1999年にリリースされ大ヒットした「First Love」と、2018年に発売された「初恋」の2つの楽曲タイトルが組み合わされています。この2曲にインスパイアされた新たな物語を作ることをNetflixが宇多田ヒカルに申し入れ、賛同を得たという経緯があります。
劇中、歌詞をイメージするような「初めてのキスは煙草の味がした」といった台詞がありますが、製作の過程からNetflixは宇多田ヒカルと脚本の内容を共有していったそうです。楽曲そのものも本編で流れ、デビュー曲「Automatic」も含まれます。
またこの2曲を組み合わせたのにも意味があります。「First Love」と「初恋」がリリースされた間の時間は19年。物語もこれに合わせて、也英と晴道の約20年間に起こった人生を描いています。1982年生まれの同級生の2人が16歳のときに出会ってから、35歳になって再び惹かれ合うまでの月日を丁寧に追っていくことで、人間ドラマとしての要素も高めています。割と甘酸っぱい恋愛ストーリーだけに終わりません。
時間の見せ方としては、大きくは90年代後半とゼロ年代、現在という3つの時間軸に分かれ、つねに交錯しながら進んでいきます。順を追うほうがどちらかと言うとわかりやすいのかもしれませんが、過去と現在が行き来することで感情のピークを最大限に持ち上げる演出は見事なものです。泣かせにいきます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら