「ワーク・ライフ・バランス」が「無理ゲー」な理由 「いい子」を生む経済成長前提の社会構造の限界

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「ワークとライフの均衡状態」としてのワーク・ライフ・バランスを取り戻すうえで参考になるのが、「反抑圧的ソーシャルワーク(Anti-Oppressive Practice, 通称AOP)」です。

AOPは、本質的な仕事であるにもかかわらずそれに見合うだけの評価や金銭的待遇が保証されていない福祉の世界において、その構造を我慢するのではなく声をあげていくことを目指す実践です。この本の中でケアワーカーについて述べた以下の文章は、社会全体に当てはまると感じています。

少なからぬ人が、「それってなんだかおかしい」「変だ」と心の中で思いながら、「どうせ」「しかたない」とあきらめを内面化してしまっている。特に福祉現場の支援者は、もともと他者とかかわりたい、困っている人の力になりたい、という「善意」を持っている人が多い。そして、「善意」の「いい子」に不十分な労働環境で我慢して働いてもらうことで、そのシステムを結果的に温存してしまうような、やりがいだけでなく、賃金も含めた構造的な搾取が蔓延している。でも、「いい子」自身も「どうせ」「しかたない」「力不足は私の自己責任だ」とあきらめを内面化し、不満や怒りを自らに抱え込んでしまっている。(『脱「いい子」のソーシャルワーク 反抑圧的な実践と理論』(現代書館)2頁)

「脱いい子」は「脱成長」

上記における「いい子」とは、「世間や体制、社会システムにとって都合のいい子」のことです。これは福祉の世界だけでなく、ワークとライフの主従関係を受け入れ、経済成長を志向している現代社会全体が置かれている状態と同じです。まずはこの主従関係を解消すること。そのためには「脱いい子」が必要となります。著者の一人である坂本いづみさんは、その方法をあげています(187頁)。

①「いい子」であったことで報酬を受けてきたことに気づく
②「いい子」でないとどうなるか考える
③「いい子」な自分を止める
④いい意味でトラブルメーカーになる

この「いい子」を「経済成長」に置き換えることは可能です。そういう意味で、ワークとライフの主従関係を解消し両者の均衡状態を取り戻すために、まず僕たち一人ひとりができることが「脱いい子」です。

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