起業して経験した「5つの痛い失敗」防ぐポイント 独立直後は「零細企業」という認識を持つこと

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私の会社でもかつて人を採用したときも、「なぜ弊社に」というような経歴の良い人が結構応募してくれました。ただこれは謙虚に考えねばなりません。小さい立ち上げたばかりの無名な企業に、そんな経歴のいい人が来るというのは、おかしな話なのです。

当時の私は新聞に無理して求人広告を出し、経歴のいい人が来たことに舞い上がっていました。普通だったら、小さな無名企業に優秀な人が応募してくれるわけはないと思いますが、ついうれしくなってしまったのです。

そんな感じで経歴のいい人を疑うことなく採用しましたが、残念ながら結果的にはうまくいきませんでした。

私のような失敗を防ぐには、採用するときは自分だけではなく、信頼を置ける人に面接してもらうことが大切です。少なくとも自分以外に2〜3人くらいに面接してもらい、みんなの意見を聞いたうえで最終的に採用を決めるべきだと思います。

独立してビジネスモデルがうまく回っていくと、「私はできる!」と勘違いをして、採用も自分の思い込みで決めてしまうケースがありますが、私も正にその轍を踏んだわけです。

とくに独立した場合は、人員を1人増やすのもとても重要な決断です。アウトソーシングのアシスタントはその場での判断でいいですが、人を実際に採用するときにはそういうわけにはいかないのです。独立したばかりで何もできていない企業だからこそ、採用はあえて慎重に、謙虚にならなければなりません。

コストは抑えるのが基本

最後にご紹介したい私が失敗から得た教訓は、独立直後はなるべくコストは抑えて回していくのが基本だということです。

大事なのは、独立直後の自分は零細企業なのだという認識を持たなければいけません。オフィスなどに決して見栄を張らず、なるべくコストを抑えた経営を行うことが大切です。もちろん基本的には無借金が望ましいのですが、どうしてもお金を借りる必要があれば、銀行や信用金庫にお願いするのも検討しましょう。

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かつて2008年のリーマン・ショック後に、取引先でさる銀行の担当者が普段は親身であったのが、態度が冷淡に急変した経験があります。私はその際に気分が非常に悪くなり、思い切ってその銀行からの借入金を一気に返済しました。

銀行はお金を貸して利子をもらうビジネスなので、利子が毎年入ってくることで回っていくわけです。それがなくなったら、彼らはビジネスがなくなってしまいます。その担当者はその後再度融資を私に持ちかけてきましたが、それ以来私は借入を行わず、無借金経営を貫いています。

まずはコストを抑えることを考え、無借金で行うビジネスを基本としながら、必要な場面に応じてお金を借りるのが経営の鉄則だと思います。

佐藤 文男 佐藤人材・サーチ株式会社 代表取締役

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さとう ふみお / Fumio Sato

1984年に一橋大学法学部卒業後、日商岩井株式会社(現・双日株式会社)、ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社(現・シティグループ証券株式会社)、株式会社ブリヂストン等、多様な業種において人事業務、営業・マーケティングを中心にキャリアを積み、1997年より人材紹介(スカウト)ビジネスの世界に入る。2003年に佐藤人材・サーチ株式会社を設立。著書は共著も含めこれまで19冊を刊行。近著に『今よりいい会社に転職する賢い方法』(クロスメディア・パブリッシング)『自助の時代 生涯現役に向けたキャリア戦略』(労務行政)など。

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