富士吉田市が「織物アート」で起死回生を狙う事情 6000以上あった機屋も現在は300弱にまで減少

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「裏富士」とも呼ばれる山梨県側からの富士山を正面に見通せる、富士吉田の街で、11月23日〜12月11日、織物をテーマとしたアートのイベント「FUJI TEXTILE WEEK2022」が開催中だ(撮影:上原未嗣)
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伝統産業の「織物」で街の再生を目指す

富士山のふところに抱かれた静かな街、山梨県・富士吉田市。名峰と桜、紅の五重塔をとらえた写真が「これぞ日本の風景」と海外で有名になり、コロナ前はインバウンド客で大いに賑わっていた。

そしてもう1つ、かつて全国に名を馳せた伝統産業がある。「織物」だ。富士山に端を発する豊かで清冽な水を利用した織物の歴史は1000年を遡り、江戸時代には高級織物「甲斐絹(かいき)」の産地として知られた。

また戦後になると「ガチャマン」という言葉がはやるようになる。「ガチャッとひと織すれば1万円儲かる」の意で、街全体が好景気に沸いた。用途としてはスーツの裏地、ネクタイ、座布団の生地などが一般的だったそうだ。

しかし安価な輸入品の流入をはじめとした時代の流れで、今はそうした産業も衰退。富士吉田市をはじめとする郡内地域では、ピーク時の昭和40年代に6000以上あった機屋(機織りを家業とする家)も現在約300弱にまで減少した。代わる産業もない中、人口減少も自治体の課題となっている。

こうした状況を改善したいと、地元の機屋の2代目、3代目、そして県外からの若い移住者が中心となって、織物の復活と街の再生を目指している。

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