富士吉田市が「織物アート」で起死回生を狙う事情 6000以上あった機屋も現在は300弱にまで減少

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生地の特徴を生かしてデザインされたバッグ2種。Al(オル)というブランドで販売されている(筆者撮影)

また服の裏地などに使われる素材と和紙を組み合わせた生地を開発。こちらはデザイン性の高いバッグやインテリアファブリックなどとして商品化されている。

独自ブランドの生地はファッションなど付加価値の高い商品に採用されるため、裏地などに比べ利幅が大きい。また下請けと異なり、自分の名でビジネスができる。

「とくに営業らしい営業はしていない」というが、ウェブサイトなどを介し渡邊氏の作品を見たデザイナーが渡邊織物を探し当ててくる。デザイナーが自分の作品に合う織物を発注するというよりは、渡邊氏の織物を見ることにより、新しいデザインが生まれる場合が多いという。

自然、文化、食など街のさまざまな魅力

こうした幅広い事業により、9台の織り機を備える渡邊織物の工場はフル稼働しており、年中、機織りの音がやむことはないそうだ。

渡邊織物の工場。こうした織り機9台がフル稼働している(筆者撮影)

なお、FUJI TEXTILE WEEK2022に合わせ、「西裏はしご酒」というフェアも同時開催される。西裏地区は「ガチャマン」時代に発展した繁華街。当時の看板や建築を生かした居酒屋やバー、スナックなどが軒を連ね、昭和のディープな雰囲気を色濃く感じられる界隈となっている。開催期間中は1000円×3枚つづりが2500円で購入できる金券チケットを販売するほか、景品がもらえるスタンプラリーも開催する。

このように、現在進行形で街が再生している、熱いエネルギーを感じられる富士吉田。イベントは、自然、文化、ショッピング、食といった、さまざまな街の魅力をいっぺんに味わえる絶好の機会だ。都内から特急電車や車で1〜2時間ほどなので、遠足気分で足を伸ばしてみるのもよいのではないだろうか。

圓岡 志麻 フリーライター

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まるおか しま / Shima Maruoka

1996年東京都立大学人文学部史学科を卒業。トラック・物流業界誌出版社での記者5年を経てフリーに。得意分野は健康・美容、人物、企業取材など。最近では食関連の仕事が増える一方、世の多くの女性と共通の課題に立ち向かっては挫折する日々。contact:linkedin Shima Maruoka

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