富士吉田市が「織物アート」で起死回生を狙う事情 6000以上あった機屋も現在は300弱にまで減少
11月6日にオープンしたばかりの「FabCafe Fuji」には展示スペースや工房などを備え、テキスタイル制作やものづくりの交流拠点としても機能する。カフェのスタッフも他県からの移住者。うち料理担当のスタッフはヨーロッパの国々を移り住んだこともあるが、富士吉田の自然と、空気や水のおいしさにほれ込んで移住を決めたという。地元産のハーブや手作りソーセージ、金木犀のお茶など、ここでしか味わえないメニューを提供する。
地元の機屋の2代目、3代目のさまざまな試み
このように、「外からの人」が参加することで、土地の魅力を掘り起こし、外部に展開してけるメリットがあるという。地元では「当たり前」で「ありふれている」とされているものに新しい光を当て、価値の再生を図るわけだ。
移住者だけでなくいわゆる「関係人口」のプレーヤーも、八木氏の取り組みには多く参加する。例えば美術評論家で、現在森美術館特別顧問の南條史生氏もアートディレクターとして関わっている。
そして、これまで引き継いできた伝統を革新し発展させていこうと活動する、地元のプレーヤーの存在も忘れてはならない。織物工房を営む「渡邊織物」の3代目、渡邊竜康氏もその1人だ。
富士吉田の織物産業には伝統的に「親機、子機、孫機(おやばた、こばた、まごばた)」という規模による序列があり、大きな機屋から下請け、孫請けするのが慣例だった。
しかし産業の衰退に伴い、子機、孫機なども減少。そうした中で渡邊氏は直接、国内外のデザイナーと契約し、裏地などの生地や、独自ブランドの生地を販売している。渡邊氏は写真家としても活動しており、そうした織物とは異なる分野から取り入れた感覚が、オリジナリティーの源となっているようだ。渡邊氏の作品はこのたびのイベントで目にできるほか、市場でも販売されている。
モコモコとした風合いが特徴的なテキスタイルは、国内に31店舗を展開するインテリアショップ、アクタスにも並べられているそうだ。
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