富士吉田市が「織物アート」で起死回生を狙う事情 6000以上あった機屋も現在は300弱にまで減少

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2022年はアート展「織りと気配」と、地元の歴史や産業の展示会「WARP&WEFT」を同時開催する。写真は展示作品のイメージ。建築におけるテキスタイルの可能性を探る(写真:DOSO)

2022年11月23日〜12月11日には、アートと織物の2つで構成する布の芸術祭「FUJI TEXTILE WEEK 2022」を開催。2021年の初開催に続き2回目となり、国内外9名のアーティストによるアート展「織りと気配 Vol.2」と、地元の歴史や産業の展示会「WARP&WEFT」を同時開催している。

豊かな自然と美しい街をバックに展示されるテキスタイルアートはもちろんだが、地元の職人の作品を含む生地や製品が展示販売され、富士吉田の織物の伝統や新しいカルチャーをショッピングでも楽しめるのが見所の1つとなっている。

富士吉田の織物に新たな価値づけを

本イベントの実行委員を務める株式会社DOSO代表の八木毅氏は、イベントの意図について次のように説明している。

「富士吉田の織物の歴史にちなみ、織物をテーマにしたアートの展示会となっている。ただ従来富士吉田の織物は生地として問屋に卸されるため、地元の人や街を訪れた人が使えるものではなかった。今回のイベントをはじめとしたさまざまな取り組みによって織物に新たな価値づけをし、観光資源にしていきたい」(八木毅氏)

実行委員長の八木毅氏。美術系の大学を卒業した後、仏留学などを経て、10年ほど前から富士吉田の地域創生に携わっている(筆者撮影)

そのほか、会場としてリノベーションした古民家を活用しているため、地域の歴史を空間からも感じることができる。とくに、八木氏は建築を彩る素材としての織物に可能性を感じており、建築空間と合わせて展示することで、新たな文化や産業が生まれるきっかけになれば、と考えているそうだ。

八木氏は富士山などの自然や街の歴史、産業などの観光資源を活用した地域創生を目指し、10年ほど前から活動を進めてきた。地元ではなく、富士山を挟んで隣の静岡県出身だ。

「外から来た人、また地元の人がつながって、地元のために何ができるかいっしょに考える、そうした場をつくりたい」と、空き家を利用したホステル、カフェの運営を行う。その中には長期滞在が可能な、アーティスト専用のレジデンスもあり、滞在中のアーティストもオープニングのタイミングで作品を展示したそうだ。

次ページ「外からの人」も参加し地元産業の価値の再生を図る
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