「ヒトが大切」対外アピールで現場疲弊の本末転倒 来年から義務化「人的資本の開示」に疑問の声

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そうは言っても、人的資本経営と開示が企業にとって本当に必要なことなら、担当者には歯を食いしばって頑張ってもらうしかありません。しかし、この「本当に必要なこと」なのかどうかが、悩ましいところです。

経営者に取材したところ、「人的資本経営を推進し、社員の能力アップと企業価値の増大に努めたい」(建設)という教科書的な回答もありましたが、次のような冷めた意見が聞かれました。

「伊藤レポート(人的資本経営を提唱した政府報告書)が提唱している、戦略を作り、人材ポートフォリオを構想し、実現に向けて教育投資をするということは、1990年代から人的資源管理論で言われていました。レベルが低い企業には少し意味があるかもしれませんが、当社では『何を今さら』という受け止めです」(素材・経営者)

また、ヒトに関する情報を開示することの難しさを指摘する声がありました。ある機械メーカーの経営者は、女性の雇用について次のような疑問を呈していました。

「当社の全従業員に占める女性の比率は約10%で、女性活躍についてはダメ企業になるそうです。ただ、工業高校の生徒に占める女子の割合は7~8%で、当社はむしろ女性活躍に積極的です。こんなくだらない数字に一喜一憂して、何か良いことあるんですか」

「ヒトの情報は隠したい」が本音

それよりも個人的に気になったのは、「そもそも人的資本の開示は企業にプラスになるのか?」という本質的な指摘です。

「他社との競争上重要な技術・ノウハウは隠したい、公開するなら特許で保護したいと考えるのが普通ですよね。ヒトもまったく同じ。本当にヒトが競争優位の源泉というなら、隠す方が企業にとっても株主・投資家にとってもプラスです。人的資本に限らず、何でもかんでも開示せよという最近の風潮は、大いに疑問です」(電機・経営者)

このように、人的資本の“経営”には異論はないものの、“開示”については、経営者も担当者も拒否反応を示しています。

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