"かすり傷"放置で「片腕切断」25歳男性の驚く顛末 「医師宣告を動画配信」する超前向きな人生観

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6月の突然の医師宣告、そして手術を経て5カ月。大学には復学せず、退学した。「実家に戻っておいで」という両親の申し出を断り、もうすぐシェアハウスに居を移す予定だ。そこで仲間とともに、まずはYouTubeへの動画配信に本腰を入れるという。

医師宣告の動画からコツコツとアップし続け、まもなくチャンネル登録者数が6万人になる(2022年11月22日現在)。YouTubeへ収益化の申請をしたのは、つい最近のことで、まだ配信だけでは稼げていないと話すが、宮野さんは“超前向き”だ。しかし矛盾するようだが、その頭の片隅にはいつも「5年生存率」がチラついている。5年後、自分は再発せずに生きていられるだろうか。

「死を意識すると人生を振り返るって言うじゃないですか。僕はいつ死んでもおかしくないとなったとき、お金や安定よりも、仲間と過ごす時間やエンタメに関わりたいという夢がいちばん大切だと思ったんです」

自分は可哀想ではなく「価値がある」

YouTubeには「片腕になってから初めて洗濯してみました」「しばらく動画配信を休んでいたのは、“腕”探してたからです」「障害者手帳で動物園に行ってみました」など、ブラックユーモアが光る動画を次々と配信。そこに悲壮感は1ミリもない。

片腕で洗濯
左腕を切断してから、初めて一人で洗濯に挑戦した様子を動画で配信(写真:YouTube「片腕男子」チャンネルより)

しかし、無理をして前向きな発信をしている、というのではない。美辞麗句を並べたような応援メッセージでもない。「片腕を失った自分」をコンテンツとしてフルに使い、真剣に“笑い”をつくろうとしている

もちろん、それは“障害者いじり”とは違う。漫才をする芸人ではなくなってしまったけれど、自分のつくる動画は、ずっと夢見てきた「エンタメ」の一つだと信じている。各動画のコメント欄には、宮野さんの底抜けに明るい姿に励まされた闘病中の人、つらい日々でも「笑えました」という人たちのメッセージであふれている。

「僕のこの状況って可哀想というより、数少ない属性で珍しいから価値があると思うんです。元芸人で、片腕で、現在ユーチューバーで……どんどん自分の肩書を増やしていきたい。僕はやっぱりエンタメを仕事にしたいので」

宮野さんに将来を悲観する気配はない。「これから生活はどうするの?」と心配する人がいるかもしれないし、もしかしたら破れかぶれになっているのではと思う人もいるかもしれない。

宮野さんを支えてくれている友人たちは、退院時に漫画『左ききのエレン』をくれた。別れ際には「じゃあな」と左手で握手を求めてくる。もう、めちゃくちゃだ。でも、そういう仲間たちのおかげで、いま“新しい自分”をポジティブに生きられている。

【2022年11月27日18時40分 追記】初出時、病名の記載に一部誤りがあり訂正いたしました。

折野 美佳 東洋経済 編集者

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おりの みか / Mika Orino

週刊誌の編集者を経て、2019年に東洋経済新報社に入社。2022年より東洋経済オンライン編集部。

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