"かすり傷"放置で「片腕切断」25歳男性の驚く顛末 「医師宣告を動画配信」する超前向きな人生観
「ただのかすり傷で病院には行かないですよね」と、現在の宮野さんが笑う。「まあいっか、と思って放置してしまったんです」。
随分長く経ってから、あまりに傷が治らないことと、その傷が化膿し、しこりが大きくなっていることを自覚した。そこで、とりあえず診てもらおうと町医者に行ったのだという。傷を診察した医師はすぐに大きな病院への紹介状を書き、冒頭のシーンになる。
宮野さんの親指の傷は、悪性腫瘍となり、左脇のリンパにも転移していたのだ。
医師「手術をするなら、治すためにいちばんベストな方法が『切断』。それは、腕と肩甲骨を含めて脇の下からごっそり全部、鎖骨のほうまで取る手術になると思います。今の段階で本人がどっちの手術をするのかは、ある程度決めておいたほうがいいかもしれない」
言葉を選びながら、過酷な治療方法を伝える医師。その内容を聞いた宮野さんは、迷いのない表情で「結構決まってます」と告げた。医師は「どうする……?」と言葉に詰まりながら尋ねる。すると宮野さんは、きっぱりとこう告げた。
「(腕を)落としたほうがいいと思います」
この宮野さんの迷いのない様子に、表情は写っていないが、医師の少し安堵したような空気を感じる。まだ25歳の若者に、命の保障はないが腕を切断することがベストだと告げるのは、かなり苦しい気持ちだっただろう。
医師「頑張れそう……?」
宮野さん「全然大丈夫です」
医師「……強いね」
「死ぬかもしれない」という恐怖
しかし、再び残酷な試練が宮野さんを待ち構えていた。左手親指から脇のリンパへと転移した悪性腫瘍が、内臓に達している可能性があるというのだ。そうなると「手術はできない」と医師から説明された。その検査結果が出るのは、さらに10日後。最初はあまり実感がなかったという宮野さんだが、この10日間で恐怖が一気に押し寄せてきたという。
「検査結果の日、待合室で呼び出しを待っている時間が、人生でいちばん怖かったです。『死ぬかもしれない』という恐怖で心臓がバクバクしました。その死の恐怖に比べたら、たとえ腕がなくなっても治療できるだけいいと思っていました」
検査の結果、内臓への転移は見られず、左腕の手術が執刀されることになった。治療できるだけでもよかった――それが本心だったとはいえ、腕を失うことを割り切れるものだろうか。宮野さんはこの医師宣告の一部始終をカメラに収め、前述のように自身のYouTubeチャンネルで配信。以降も、治療の経過をほぼリアルタイムで配信し続けた。動画には「冷静に受け止めていてすごい」といったコメントがたくさんついた。
「信じられないかもしれませんが、このとき僕は『自分は生まれ変わる』『新しい世界が始まる』とすら思っていました。これは僕が元々持つ『エンタメ精神』ゆえかもしれません」
正直、強がりなのではないか……そう思い、宮野さんの顔を見つめると、迷いのない表情で微笑みかけられ、面食らってしまう。「エンタメ精神」、それは宮野さんが目指してきたことに関係するだろう。
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