"かすり傷"放置で「片腕切断」25歳男性の驚く顛末 「医師宣告を動画配信」する超前向きな人生観

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ともに芸人を目指してきた相方には、「芸人やめるわ」と伝えた。相方はそれを受け入れ、いつも飄々としている態度にも変化はないように見えた。でも、相方にとっては再起をかけた挑戦だ。それが志半ばで終わりを告げるのは、きっと悔しいに違いない。この決断を無駄にしないためにも、「幸せレベル」を自分で上げていかなくてはならない。

そうは思っても、メンタルが落ち込んでしまう場面もあった。退院後は、関西の実家から両親が上京し、身の回りの手伝いをしてくれた。それはとても助かった反面、自分の無力感を強く自覚することにもなったと話す。

「突然障害を負ってしまった人によく起こることだと、病院のカウンセラーがおっしゃっていました。周りの人が心配して何もかも手伝ってしまうと、本人は無力感を覚えてしまうそうです。もちろん、気を遣ってくれている相手の気持ちを有難いと思っているのですが……。僕の場合は両親に対して苛立ちを覚えてしまい、そんな自分にも嫌気が差していました」

とはいえ、できないことや不自由になることも実際にはある。「洋服は一人で着られるけど、靴ひもを結ぶのは難しい」など、身近な人には自分のできること、できないことをまず話したほうがいいと宮野さんは言う。

「何でもかんでも手を貸してもらわなくても大丈夫、と言っても、同居していた相方は退院の日に迎えにすらきてくれなかったですけどね(笑)。家に帰ったら、『あ、おかえり』と入院前と変わらない出迎えでした。でも、その態度に救われた部分が大きかったです」

片腕切断
「今日は泊まりにきていた友人に靴ひもを結んでもらいました」と話す宮野さん(写真:筆者撮影)

 

「前例のない病気」に罹患していた

手術後の病理検査で、宮野さんを襲った病気の詳細が判明した。類上皮血管肉腫と類上皮肉腫という2つの希少がんを併発していたのだと言う。これは世界でも例を見ない病気で、WHO(世界保健機関)にも報告がないと医師は話した。原因については特定できていない。

その結果報告を伝える動画で、宮野さんは語った。

「人類初の病気。類上皮血管肉腫になる人って100万人に1人らしいんですよ。類上皮肉腫も年間20〜30人。この2つがあるっていうのが、今まで1例もなかった。『新人類』ですよね。例えば、視覚を失った人って聴覚が良くなるとか言うじゃないですか。左手を失ったから予知能力とか出るかもしれないですよね、新人類なんで。予知能力が出たら、僕は……投資します(笑)」

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