「減税を盲信する人」に知ってほしい公共軽視の罠 パンデミック・エネルギー・教育・医療、課題山積

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主要な市場の失敗は、外部性が存在するときに生じる。すなわち、ある当事者の行動が他者にコストをもたらすかまたは便益を与えるかしたとき、それらに対して支払いを行わないかまたは報酬を受けない場合である。伝統的な経済学では外部性はあまり重要視されなかった。

しかし21世紀の経済では、外部性は一番重要なものになり、また外部性の問題の多くは優先課題になっている。研究活動から得られる社会的便益は莫大であり、研究を行った当事者が「獲得」する利益を十分大きく上回っている。このことが、政府による補助金が必要とされる理由である。

市場が回復力に欠けていることが示されたときにも、大きな外部性が存在することが明らかになった。たとえば、ヨーロッパ諸国は、ロシア産ガスにあまりにも依存しすぎていることから非常に苦しんできた。

また全世界は、アメリカの金融システムが崩壊しそうになったことから大きな損害を受けてきた。これらのことが、市場の回復力を向上させるためにアクションを起こさなければならない理由である。

低成長・日本が直面する課題

日本は世界でも最も効率的な製造業を持つ国の一つであるとの名声を得てきたが、過去数十年にわたる低成長、また時としてマイナス成長は、公共部門をも含めた、日本経済におけるさまざまな分野に対する疑問を提示することとなった。

また生活水準の向上という長期的な観点から見ても、発展するグローバル経済における競争力という観点から見ても、このことは正しいだろう。

主要な論点は、停滞しているように見える日本経済の成長を促進させるために政府は何ができるかである。もちろん、重要なことはGDP─経済の全体的な大きさ─ではなく、生活水準である。政府が過剰に物的な成長にだけ注目して、環境や、安心感のような福祉に影響を及ぼす経済社会制度の側面に十分な注意を払わないことがある。予算を節約するために老齢年金や就学前教育費を削減すると、長期的な生活水準を実際に向上させることなく、むしろ低下させるかもしれない。 

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