2000年代に入ると身元判明のほうが圧倒的に多くなる。2017年、引き取り手のない遺骨49柱のうち、身元不明は1柱のみ。残り48柱の身元は判明していた。
身元判明の遺骨が9割を超えていることに、北見氏は「私たち市役所の職員も、この現実をどう受け止めていいのかわからずにいるのです」と言葉を詰まらせる。
携帯電話が主流になったことが一因
なぜ、こんなことになったのか。原因は複合的だ。
要因の1つは世帯人数の減少と思われる。核家族化が進み、横須賀市では1993年に1世帯当たりの平均人数が3人を割った。足元では2.5人前後にまで減っている。生活を共にしていなければ、たとえ家族や親族であっても心理的な距離は広がりがちになる。
さらに親族に電話で伝えられず、手紙での連絡が増えたことも影響している。固定電話が主流だった時代は、死亡者の住民票や戸籍から家族、親族の名前・住所を捜し当て、NTTの104番号案内サービスで親族の電話番号にたどり着くことができた。自治体から電話連絡を受けた親族は、たいてい遺骨を引き受けた。
だが、携帯電話が主流となった現代では勝手が異なる。東洋経済が携帯キャリア各社(ドコモ、ソフトバンク、KDDI、楽天モバイル)に「死亡者の親族の携帯番号を教えてほしいという自治体からの問い合わせに対応できるか」と問うと、全社が「捜査機関による事件捜査であれば(裁判所発行の捜査令状があれば)開示することがあるが、自治体に開示することはない」などと回答した。
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