「働きアリの法則」働かない2割、会社はどうすべき 社員の「自立・自律スイッチ」を押す3つの原則

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

そもそも人的資本経営とは、「モノ・カネ」のように、「ヒト」の持つ能力を「資本」として捉えた経済学の用語です。そして経済産業省は「人的資本経営」を「人材を資本として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方」と定義しています。

筆者が提唱している「人材力強化」、および「組織力強化」とは、「役割や職務をまっとうするために人材・組織の力を高めること」なので、常に役割や職務の内容に立ち返る必要が生じます。そして当然ながら、人材力・組織力強化には、企画側・実施側に、「人材や組織の力が強化されたことにより、経営や事業が成長、安定する」という明確なメリット・見返りがあります。

「人的資本経営」を進めていく際には、コストをかけて行うわけですから、現実的にはこうした施策の1つひとつのメリット・見返りを明らかにするマインドとプランニングがとても大切といえます。

従業員の自立・自律のスイッチを入れる

筆者は常々、「言葉の意味内容からすると、自立・自律を従業員に要求するというのは筋が違うのではないか」という疑問を持っていました。なぜ、自立・自律は従業員に要求されるものなのでしょうか? その答えについて、筆者が現在持っている仮説は以下の3つです。

①水や空気のように「当たり前にそこにあるもの」は重要視されづらいことから、当たり前ではない「自立・自律」が渇望される(希少性の観点)

② 厳しくなる一方といっても過言ではない企業経営のリアリティを鑑みるに、毎月の給料の支払いに対して従業員のパフォーマンスがなかなか上がらない現実に、経営者は割り切れない思いがある(企業と従業員間でのギブ&テイクの観点)

③ 労働市場における自身の価値に関して、個々の従業員が意識的・無意識的に向き合わざるをえない状況にある(従業員の市場価値の観点)

①から③については、大手企業の新入社員研修で、時折、研修講師の立場から新入社員たちに伝えています。そうすると、社会人経験がほぼゼロである新入社員の彼らをもってしても「確かにそうだ。この研修も受け身ではなく、自分自身の課題として参加しないと」というモードに変化して、背筋がピッと伸びるのです。

このようにして、ある程度の自己開示を通じて各人の自立・自律を促すことができるわけですが、ただし、筆者がそのように伝達する以前から「わかっている」新入社員は一定数います。

新入社員研修に臨む態度や言動が明らかに周囲と違う新入社員たちは、講師や人事から言われる前に研修準備を行い、積極的にメモを取り、話し合いや発表に率先して関わっていきます。そのような彼ら彼女らこそ、本当の意味で自立・自律していると、いつも思わざるをえません。

ただし、新人には「鉄は熱いうちに打て」が通用しますが、既存の社員に対しては、一度伝えるだけで伝わるとは限りませんので、継続的に伝え続ける努力が不可欠です。

次ページ人材力・組織力強化のための3原則
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事