企業の命運を左右する「ブランディング」の本質 「お客様のために」で失敗した大塚家具の蹉跌

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ブランディングを間違えると、大きな代償を払うことにも(写真:sunwannar/PIXTA)
モノやサービスが飽和し、他社との差別化を図らなければ生き残れない今、”ブランディング”が大きなカギを握っている。だが、その本質を間違えると落とし穴にはまることも。創業以来70年に渡って多数のクライアント企業のブランディング戦略を手掛けてきた大伸社コミュニケーションデザインが、もっとも大切な「ブランドのコアづくり」について解説する(本稿は、『手にとるようにわかる ブランディング入門』を一部抜粋・編集のうえお届けします)。

ブランドのコアを定め、一貫した取り組みを行う

ブランディングにおいて、まず始めに取り組むべきことは何でしょうか。それは、ブランドのコアを定めることです。つまり、「どんなブランド価値を感じてもらいたいか=どんなブランドイメージ」を育てて、維持していくかが決まらない限り、その活動に意味がないということです。ブランドのコアを定め、すべてのブランド・タッチポイントにおいて一貫した取り組みを行うことで、結果として確固たるブランドが作られます。

では、ブランドのコアとはどのようなものでしょうか。たとえば、アップルの故ジョブズ氏は「Think Different」というスローガンをベースに「ファッション」「イノベーション」「オリジナル」「ミニマリズム」の4つのキーワードを設定していました。

では、amazonのブランドのコアは何でしょう? amazonと聞いて、浮かぶブランドイメージは「何でも揃い、すぐ届く、便利な体験」といったところでしょうか。

このようなイメージを生み出しているブランドのコアとして、amazonは2つのキーワードを掲げています。それは、「顧客第一主義を世界で一番実現する企業になる」「何でも揃う。すぐ届く」というものです。amazonはそのブランドコアの実現のために、様々なサービス改善やブランド体験の提供を行っているのです。

それはブランドを体現する社名やロゴにも表れています。amazonのロゴが近くにあればご覧ください。社名については、ABC順に並べられることが多いので、Aで始まる社名にしたと言われています。その中から「アマゾン」を選んだのは「世界最大(=何でも揃う、世界で一番顧客第一主義)」をイメージさせるからです。

ロゴデザインでは、aからzに矢印が描かれています。これはAtoZ、すなわちすべて(=何でも揃う)を意味します。また矢印の形は、口角が上がった口、つまり顧客のスマイルです。つまり、AtoZという全世界で、顧客第一主義を表しているのです。

強いブランドでは、それを見たとき、明確なブランドのコアが想起できるように緻密な設計がなされています。たとえば、以下のブランドからどんなコアをあなたは想像するでしょうか。

① ユニクロ ② ナイキ ③ ダイソー ④ エルメス

以下の回答に近い言葉が浮かんだのではないでしょうか。

① コストパフォーマンスへの期待/高品質な日常着

② 自分の能力を高めてくれる期待/挑戦的、革新的

③ 価格以上の品質への期待/思わぬ発見

④ 伝統ある一流品への期待/職人技

このようなブランドのコアは、ユーザーの視点から表現する際に「○○への期待」、「○○の約束」、「○○への愛着」という言葉に置き換えてみるとわかりやすいと思います。あなたが関わるビジネスのブランドコアは何と言えるか? 一度考えてみたとき、それが明確に断言できないのであれば、ブランドのコアから今一度構築する必要がありそうです。

次ページブランドへの期待を裏切る代償は大きい
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