結論から先に述べてしまうと、ここで紹介する企業はコスト優位を保持するのに対して、低収益の企業はコスト劣位にあった。
その帰結として、中収益の企業が市場の中央を制圧するのに対して、低収益の企業は市場の辺境に陣取らざるをえない。
部品メーカーに関して言えば、中編記事には系列に組み込まれた企業が登場するが、ここで紹介する企業では独立系の存在感が大きい。
ここに該当する15社の顔ぶれは以下の通りである。
トヨタ自動車(輸送、愛知、1937年、6.09%)
本田技研工業(輸送、静岡、1948年、7.63%)
デンソー(輸送、愛知、1949年、7.66%)
豊田合成(輸送、愛知、1949年、6.53%)
ショーワ(輸送、東京、1938年、7.26%)
日信工業(輸送、東京、1953年、8.01%)
ブリヂストン(ゴム、福岡、1931年、5.96%)
日本特殊陶業(硝子、愛知、1936年、6.74%)
堀場製作所(電機、京都、1953年、8.05%)
住友理工(ゴム、三重、1929年、5.82%)
エクセディ(輸送、大阪、1950年、6.05%)
ダイキン工業(機械、大阪、1934年、6.62%)
日本航空電子工業(電機、東京、1953年、5.83%)
アシックス(その他、兵庫、1949年、8.76%)
オムロン(電機、京都、1948年、6.64%)
*1 地名は生地、年は設立年、%は50年間実質成長率を示す
*2 高成長、高収益の定義や企業分類の詳細については『企業成長の仕込み方』を参照
ここでのケース総数15のうち、戦中・戦前に設立された企業のケースは6つで、低収益のケース(中編記事)より1つ多い。
ちなみに高収益のケース(前編記事)は過半が戦前派であった。収益面では業界のパイオニアが有利になると考えれば、納得のいく数字である。
分析対象期間に入ってから上場したベンチャー系は、低収益が4ケース、中収益が8ケース、高収益も8ケースとなっている。
ただし高収益は母数が10なので、割合としては中収益の12ケース分に相当する。設立は他社より早く、上場は他社より遅いほうが収益面では有利ということになる。
事業新興戦略の勘所
ここには、成長戦略の理想型が登場する。旧主業が生み出したキャッシュフローで次の新主業を育て上げ、新主業が生み出すキャッシュフローで未来の主業を育てにいく、というものだ。
このサイクルを回すための基盤を整えた企業は外生的な攪乱に対して抵抗力を持つため、ちょっとした逆境なら乗り越えてしまう。
分析対象期間以後の成長率や利益率を見ても、安定性は抜群である。
ここに該当する11社の顔ぶれは以下の通りである。
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