孤立が平気な人こそ実は「メンタルに注意」なワケ 慢性的な疲労や寝つきの悪さはありませんか?

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昨今、企業が取り組むべき課題として、「健康経営」という言葉がよく聞かれるようになりました。従業員の健康増進に努めて働きやすい環境をつくり、働きがいを高めていくことが、社員一人一人のウェル・ビーイングな生き方にもつながり、同時に企業の成長・発展にも寄与するという考え方です。

健康経営の推進には、企業のトップがその重要性を認識し、社員に対しても意思表明することが必要です。そして、産業医や保健師、衛生管理者等の産業保健スタッフの確保など、心の健康づくりの体制を整備していくことが求められます。

管理職層の人は「いつもと違わないか」をチェック

現在、労働安全衛生法に基づき、従業員が50人以上規模の事業所では毎年1回、ストレスチェックを行うことが義務づけられています。厚生労働省が提供する「職業性ストレス簡易調査票」などを用いて従業員のストレス度を測り、強いストレスを抱えている人がいれば、産業医や保健師との面談の案内、専門医の紹介を行います。

さらに、社外の電話相談窓口との契約などで、複数のヘルプラインを用意することも、従業員の休職、離職のリスクの低減につながります。

ストレスチェックの活用と併せ、普段から風通しのよい職場環境を整備していくことも大切です。メンタルダウンの原因は職場だけとは限らず、手厚い対策をしていても、不調を抱える社員が出ることもあります。

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そんなときも、早めに不調の芽に気づければ、重症化する前にケアをすることができます。ポイントは「いつもと違わないか」というシンプルな視点です。

いつも時間に余裕を持って行動していた人が、遅刻しがちになった。

メールの返信が早かった人のレスポンスがやたら遅くなった気がする。

以前は絶対にそんなことはしなかったのに、会議で居眠りすることが続いている。

管理職層の人は、部下にこんな変化が見られたら、「最近、疲れているようだけど、変わったことはない?」などと声をかけることを意識しましょう。ポイントは、「対面での接点」と「少人数でのコミュニケーション」です。

短時間でもいいので、定期的に上司と部下の個人面談の機会を設けたり、一緒にランチに行ったりするのもよいでしょう。悩みや不安を話せる空気感を醸成していくことも、健康経営時代のマネジメントの重要な課題です。

加藤 高裕 浜松町メンタルクリニック院長、医学博士、産業医

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かとう たかひろ / Takahiro Kato

自身のクリニックでビジネスマンをはじめとした多くの患者の診療を行う傍ら、大手企業を中心に産業医も務める。

担当企業で多数の休職・復職の支援を行い、復職成功率は9割を超え、面談した従業員から厚い信頼を得ている。医療的な助言のみならず、健康経営の推進や福利厚生の拡充まで、企業に対してビジネスの現場に即した幅広いメンタルヘルスケアの提言を続けている。精神科医の産業医は非常に稀で、産業医全体の5.1%にとどまっている。

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