小島慶子、私こそ持っていた「おっさん性」の正体 日本社会をしんどくする元凶がそこにある

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小島慶子さん(撮影:梅谷秀司)

小島:「若くて可愛い女しか見たくないよね」という感覚の男性たちが権限を握っていた当時のテレビの世界で、そういう視線に晒されることに苦しみながら、いつの間にか自分もその価値観に染まり、過剰適応してしまったんだなと。そうしないと女性が生き残れないような職場っておかしいよね、という気づきですね。職場を社会と言い換えても良いですが。

主夫になった夫に「誰のおかげで」と…

2つ目は、夫が仕事を辞めたときです。「稼いでいない男性は尊敬できない」「お金を稼いでいる私のほうが立場が上だ」と思ってしまったんです。まさか自分がそういう発想になると思っていなかったので、すごくショックでした。

私は1972年(昭和47年)生まれ。猛烈サラリーマンの父と専業主婦の母、子供2人という、戦後昭和の典型的な中流家庭で育ちました。

高校生のとき、父に「誰のおかげで暮らせているんだ!」と言われてすごく腹が立ったんです。父は威張り散らすタイプではなかったですが、戦前生まれですから、やっぱり多少は家父長制的な価値観を持っていたのだと思います。母にも時々横柄な態度をとることがありました。

そういうときに私は猛然と抗議していたんですよ。お金を稼いでいる人間が偉くて家事には価値がないという考え方を、私はずっと軽蔑していたんです。

ですが、いざ自分が大黒柱になったら、そういう考え方になってしまいました。夫婦喧嘩をしたときに、「誰のおかげで」と夫に言い放ってしまったのです。

私は15年間の会社勤めで男性と対等に働き、かつ世間の平均よりも高いお給料をもらっていたので、おごりがあったんですね。それにまったく気づいていませんでした。知らぬ間に「稼げない人間は能力が低い。稼ぐ人間のほうが偉い」という、偏った考え方に染まっていた。夫と共働きだった頃は気づきませんでしたが、夫が無職になったとき、初めて自覚しました。これではモラハラだと気づいて、怖くなりました。

ただ、それにはもう1つ理由がありました。夫が仕事を辞めたのと同時に、子供たちも幼児期ほどは手がかからなくなって、私のトラウマの封印が解けたのです。

結婚当初に夫がとったある行動によって、私はショックから不安障害という精神疾患を発症しました。でも子供が幼かったので、とにかく夫婦で子育てに集中せねばと、なかったことにして封印していたんですよね。それが、経済的弱者となった夫を見た瞬間に蓋が開いた。

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