小島慶子、私こそ持っていた「おっさん性」の正体 日本社会をしんどくする元凶がそこにある

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小島慶子さん(撮影:梅谷秀司)

小島:いわゆる「自己責任論」もそうですが、今は、人生は何でも思い通りにできるはずだという考え方が強い。人が肩書で判断され、代替可能な存在として使い捨てにされています。一度でも既定路線から外れたら、落ちこぼれ扱い。日本は、人生のやり直しが極めて難しい社会です。

「良い子であれ」「良い働き手であれ」「男は男らしく仕事を最優先し、女は女らしく家事と育児を最優先せよ」「国が栄えるような理想的な家族を作れ」「困っても人に頼るな」「安い賃金でも文句を言わず働け」「言いたいことがあっても我慢し、上位の者に従順に」……どれもうんざりするほど言い聞かされてきました。

そして本意でなくても、多くの人はそのように生きてしまっている。だって、そうしないと生き残れませんから。ここに並べた考え方って、権力者が非力な人々を効率よく搾取するのに都合がいいんです。

全員で「おっさん性」を手放そう

でもご存知のように、世界的に見て、完全にアウトです。生産性や経済成長の観点だけではなく、大原則の人権の観点で、もう完全にアウトなんです。だから当時、五輪組織委員会の会長だった森氏の女性差別発言には、海外の国々からも厳しい批判が寄せられましたよね。

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森氏の発言からは、会議が民主的な話し合いの場であるという認識に立っていないのではないかと感じました。つまり、権限のある男性以外は、女性も下位の男性たちも、みんな黙ってろという発想ではないかと。あの出来事が極めて象徴的だったのは、日本の社会はいまだにその原理でドライブされていることを世界に知らしめたからです。

人間らしさを犠牲にして働けば豊かになれたかつてとは違って、右肩上がりで経済が成長しなくなった今の日本で、このままのやり方を維持しても何もいいことはありません。全員で「おっさん性」を手放して、楽になったほうがいいんじゃないか、と。

もし今回の本で、思わず「ああ、うるさいな」と読み飛ばしたページがあれば、ぜひ角を折っておいてください。たぶんそこが、ご自身の無自覚の「おっさん性」について語られている箇所です。

女性も男性も、これからの人生をハッピーに生きるために、脱「おっさん社会」を加速させたいです。

小島 慶子 エッセイスト、タレント、東京大学大学院情報学環客員研究員

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こじま けいこ / Keiko Kojima

1972年、オーストラリア生まれ。エッセイスト、タレント。東京大学大学院情報学環客員研究員、昭和女子大学現代ビジネス研究所特別研究員。学習院大学卒業後、TBSに入社。アナウンサーとしてテレビ、ラジオに出演。2010年に独立後は、各メディア出演、講演、執筆など幅広く活動。2014年、オーストラリアに教育移住。自身は日本で働きながら、夫と二人の息子が暮らすオーストラリアとを行き来する生活を送る。著書に『解縛』(新潮文庫)、『不自由な男たち』(田中俊之氏との共著、祥伝社新書)、『おっさん社会が生きづらい』(対談集、PHP新書)など。
 

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