高学歴・理系エリートがカルトにハマる意外な訳 「論理」だけで世界を理解する危うさがある

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高学歴、理系のエリートがカルトにハマることは珍しくなく、現代においては「スマホ教」が生まれているという(写真:Luce/PIXTA)
旧統一教会の記者会見でスポークスマンとして登場している勅使河原秀行・教会改革推進本部長が京都大学農学部出身であることはよく知られている。一般的にカルトやそれに近いと見られている団体や宗教に高学歴の信者やメンバーがいることは珍しくない。かつてオウム真理教による事件が頻発していた時期には、幹部に高学歴、しかも理系のエリートが多数存在したことが大いに注目を集めた。
「論理的思考能力が高いはずの彼らが、“空中浮揚”なんてものをなぜ信じるのか?」多くの人がこんな疑問を抱き、当時議論の対象にもなったものである。
デマ・陰謀論・カルト スマホ教という宗教』の著者、物江潤氏は、これに対して「理系だからこそハマった」という見方を示している。そのうえで、現代においてはスマホがこうしたおかしな「信者」を生む構図が見られる、と指摘する。一種の「スマホ教」という宗教が生まれているというのだ。(※本稿は同書から抜粋して再構成しました)

論理だけで世界を理解する危うさ

無数に出版されたオウム関連本を読んでいくと、「なぜ理系で論理的な彼らが……」といったフレーズをよく目にします。しかし、むしろこれは理系だからこそと理解するべきです。オウムが理系の学生をとくに狙って勧誘したという背景もありますが、多くの理系の学生が教団に導かれていったのには、それなりの理由があります。

理系の学問は参入障壁が高いものの、一度そこを乗り越えれば途端に面白くなり、知的刺激が高まっていきます。無我夢中でペンを走らせ数式を解いていくと、極めてシンプルな原理原則から複雑な現象が説明できることがわかり、どんどんのめり込んでいく学生も多い。

古典物理学における力学など、究極的には3つの原則(ニュートンの運動法則)から数学を駆使することですべての法則を導くことができ、複雑な自然のありようが説明され、しかも実験により実証されていきます。こうしたシンプルさと美しさ故に、自然科学のすごさを過信してしまうどころか、神の姿を見る人さえいます。

しかし、それだけ美しく表現できる範囲は、残念ながら非常に限られてもいます。しかも、その限られた世界でさえ、得られるものは仮説です。

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