高学歴・理系エリートがカルトにハマる意外な訳 「論理」だけで世界を理解する危うさがある

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生きる意味といった難題が頭に浮かべば、すかさずスマホを起動させればよいわけです。自分好みにカスタマイズされた情報・コンテンツが頭を埋め尽くし、悩みを考える隙間・時間はなくなっていくでしょう。

しかし、どうやらスマホは想像以上に賢すぎたようです。まるで心の奥底に隠していた「物語を渇望する自分」を察知したかのように、スマホは人々が望むような物語を提供し始めています。

コロナワクチンは人口削減計画のために作られた。国会議員や芸能人はゴムのマスクをかぶったゴム人間ばかり。トランプ大統領率いる光の銀河連合が闇の政府と戦っている……。今、こうした荒唐無稽な主張がネット上で増えていますが、これらは歪な物語に染まった人たちによるものです。

スマホの知性に人生を乗っ取られる

この異常な世界は、まるでヒーロー映画やロールプレイングゲームのようにできています。凶悪で手ごわい敵を倒すべく立ち上がった同志とともに幾多もの苦難を乗り越え、日夜ネットの内外で活動をするのです。熱い使命感を胸に宿し、世界や日本のために仲間と突き進むわけです。

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しかも、この世界には神様のように崇め奉られるリーダーやインフルエンサーがいます。皆とともに心から信じる神に祈り、神から発せられる言葉に胸を打たれ涙し、そして明日への活動の糧にするのです。生きる意味・心地よい居場所・かけがえのない仲間・そして心酔できる神のような存在までそろっていれば、この奇怪な物語に染まった生活は充実するに決まっています。

こんな馬鹿げた世界を信じる人は元来病的だったのであり、自分とは無関係だと考えるかもしれません。が、旧統一教会による巧みなマインドコントロールの実態が明らかになった今、本当にそんなことが言えるのでしょうか。

スマホ教の世界もまた、それらに引けを取らない、人々の思考を塗り替えてしまう強力な仕組みで満ちています。そしてそれは、物語を欲する私たちに対し、スマホが提供した最適解なのかもしれません。

しかし、スマホはスマホを利用していない時間については責任を持ちません。スマホの外にある世俗が崩落しようとも、一向に構わないのです。

スマホが賢いだけに、それを利用する私たちも賢さを持たないと、いつのまにかスマホの知性に人生を乗っ取られてしまいます。

物江 潤 著述家、塾経営者

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ものえ じゅん / Jun Monoe

1985年福島県生まれ。2008年早稲田大学理工学部社会環境工学科を卒業後、東北電力株式会社に入社。2011年2月同社を退社。2019年5月現在は地元・福島で塾を経営する傍ら、フィールドワークと執筆にも取り組む。著書に『聞き歩き福島ノート』など。

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