日本で「群集事故」が起きた場合"最悪シナリオ" クリスマス、年末年始、災害時に「危険度高い街」

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渋谷駅前
年末にかけてクリスマスや年越しなど、人が密集する機会が増えていきます。どういった場所に、どのような「危険」があるのでしょうか(写真:Ryuji/PIXTA)

2022年10月29日夜に韓国ソウルの繁華街・梨泰院で発生した群集事故は、日本人2名を含む死者150名を超える甚大な被害となりました。

この事故では、橋の手前で群集事故が起き約2000名が亡くなったと言われるサウジアラビアの「メナー群集事故」(2015年)、約350名が亡くなった「カンボジア水祭り事故」(2010年)に次いで、近年まれにみる多くの犠牲者が発生してしまいました。

事故の原因については、メディア等でさまざまな報道がなされているところで、詳細は明らかになっている最中ですが、これほどまでの大規模な犠牲者を出した群集事故は、わが国でも起こりうるのでしょうか。

筆者は都市計画を専門としながらも、大規模災害時の帰宅困難者による都心混雑問題に従事し、また国の仕事等で雑踏警備に関する各種調査を重ねた経験から、わが国で群集事故が発生する“最悪のシナリオ”について、この機会に考えてみたいと思います。

「将棋倒し」と「群集雪崩」の違い

まずはじめに、群集事故の発生メカニズムについてご紹介します。

一般に群集事故のメカニズムは様々なタイプが知られていますが、なかでも代表的なものに「将棋倒し(ドミノ倒し)」と「群集雪崩」があります。

両者はメディアなどで混同されて伝えられることも多いのですが、前者の「将棋倒し」は群集事故としては最も多いパターンであり、群集密度3~5人/㎡くらいから発生しうるものとされています。ちなみに「1㎡(1平方メートル)」は電話ボックスの面積と大体同じくらいと考えてください。

メカニズムとしては、ある程度人の流れがある過密空間のもとで、後方の人が前方の人を押し倒す、急に走り出す、躓くなどの転倒を起因とし、前方方向へ転倒が波及するものです。

過去の日本の事例では、例えば1960年に発生した「フライヤージム事故」が挙げられます。これは芸能人が参加する公開録音に想定以上の人が集まり、満員状態の中で来訪者が興奮し、ドアが開いた隙に無理に入ろうとしたことで行列が乱れ、入り口の段差に躓いて将棋倒しが発生した事故。12名の死者が出ました。

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