日本で「群集事故」が起きた場合"最悪シナリオ" クリスマス、年末年始、災害時に「危険度高い街」

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東日本大震災でもある程度顕在化しましたが、平日の昼間に大都市で大地震が発生すると鉄道が長時間運休する可能性も高く、通常の交通手段を失った鉄道利用者が自宅まで一斉に徒歩帰宅しようとするケースも考えられます。すると大都市内の一部の歩道で過密な空間が発生することも考えられるでしょう(※2)。

例えば、筆者による1都3県を対象とした大規模シミュレーション(外出者600万人の移動を再現)の試算では、一斉帰宅がなされてしまうと、発災1時間後には下図のように、都心部および都心西部を中心に複数の歩道エリアで危険な高密度空間が発生してしまいます(試算には強い仮定を置いているため、参考程度に見てください)。

(外部配信先では、図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際は「東洋経済オンライン」内でお読みください)

歩行者密度
地震発災1時間後の歩道における歩行者密度(筆者提供)。平日昼間14時に東京23区にいる外出者(自宅にいる人以外すべて)が地震直後、一斉に帰宅行動を行ったとき、歩道や車道でどのような混雑が発生するかを予測するもの。ただし、地震による道路障害や道路規制は考慮していない

ここでは歩行者密度が6人/㎡以上の密度となる歩道を太線で示しておりますが、電話ボックスに6人が詰め込められる状況を想像してください。

これは我々が2011年3月11日に経験した徒歩帰宅者の大行列とは比べ物にならないほど深刻なもので、この試算によれば、このような6人/㎡以上の歩行空間は、首都圏全体で東日本大震災の約137倍発生するようです(道路延長距離で計算)。

「大混雑」が予想される“危険な地域”

そしてこの大混雑は、時間が経過するに従って都心部から郊外部に広がっていき、東京と埼玉、神奈川、千葉の都県境付近では発災から3~5時間後が最も混雑する時間帯となります。

市街地火災の危険性が高い地域では、このような混雑が発生する前に早めの避難をしておくという選択肢も考慮すべきでしょう。なお、このような歩道における混雑の継続時間は各地でおおむね1~2時間程度と考えられますが、東京都千代田区、渋谷区、千葉県市川市などでは3時間を超える混雑が発生する場所も確認されました。

このような状況に加えて、地震時は先ほど「ハード」「ソフト」「心理」と呼んだ3つのトリガーがそれぞれ機能不全を起こしやすくなる点が問題です。はじめに強い揺れにより外部空間に大きな被害があると、路面に段差ができる、道路被害により部分的に道幅が狭まるなどハードの問題が発生しやすくなります。

また地震は突発的な災害のため、イベント開催時等とは異なり雑踏警備や誘導などによる対応が難しくなります。つまりソフトも機能しない可能性が高いでしょう。

そして地震時は、誰もが家族を心配して一刻も早く自宅に帰りたいと願うなかで、突発的な余震、火災、外壁や看板の崩落などで突然の危険が発生し、無秩序な心理状態になって我先に移動しようと考え、人々が押し合いまた群集が衝突する可能性も考えられます。

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