日本で「群集事故」が起きた場合"最悪シナリオ" クリスマス、年末年始、災害時に「危険度高い街」
「ハード」は、街路構成や路面の状態などの物的環境のことを指します。
例えば、広い通りから狭い通りに入るなどの「ボトルネック構造」を街路ネットワークが有している場合、急に停止することの難しい群集は狭いボトルネックに突入して行かざるを得ず、群集密度は高まります。
群集密度が高まると歩行速度は低下することから、後方からどんどん歩行者が供給され続け、飛躍的に群集密度は高まります。
また、群集密度の高い空間では、歩行者は自分の足元を十分に確認できません。なので路面の段差などがある場合、転倒も起こりやすくなります。
したがって群集事故を防止するためには、急に狭くなるボトルネック構造の空間をつくらない、階段や出口付近は広くする、壁や手すりなどを強化するもしくは圧力の逃げ場を作る、つまずかないように段数の少ない階段や段差は極力なくす、といったハード対策が有効と考えられます。
続いて「ソフト」ですが、これは雑踏警備を指し、警備員や警察官等が適切に誘導することで人流を滞らせない対応です。
例えば、群集を衝突させないよう一方通行を徹底する、入場制限を行うまたは小集団に分けて誘導させる、迂回や蛇行させることで動線をあえて長くする、立ち止まらないような周知を徹底する、などがその対策としてあげられます。
最後の「心理」は、人の心理状態です。群集密度が5.4人/㎡以上になると、人々の心理的ストレスが大きくなり始めることが知られていますが、人々の心理が興奮状態になることで、人を押しのけて無理に急ぐ人や後方から押そうとする人が発生し、これが転倒に繋がります。
このためには、群集を興奮させず、焦らせず、心理的な落ち着きを持ってもらうことが肝要となります。
イベント時よりも危険な状況は…
群集事故は、上記に示した「ハード」と「ソフト」と「心理」のすべてが機能していれば、頻繁に発生する現象ではありません。平時のイベント開催時などは、主催者がこのようなハードとソフトを組み合わせた対策を徹底し、万一想定以上の来訪者が想定される場合は、イベントそのものを中止することもありえます。
ただし、SNSなどがきっかけとなり突発的に多くの人が集まる状況は、多少の不安が伴います。しかしながら日本において、筆者がより危険性が高いとみているのが、「大都市を大きな地震が襲うシナリオ」です。
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