税理士の「跡継ぎ」がいない!老大国・日本の現実 医者や政治家だけではない日本経済の金属疲労

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税理士には定年がない分、70代・80代になっても、自分の退き際に悩む(写真:Ushico / PIXTA)

税理士のほとんどは、事務所を営む個人事業主だ。高齢化も止まらず、日本税理士会連合会が2014年に税理士向けに実施した調査によると、全体に占める60歳以上の比率は54%超だった(次回調査は2024年予定)。そこから8年たった現在、高齢化はますます進行している。少なくとも半数以上が60代以上なのは間違いない。

職人気質が強く、夜間・休日をいとわず、仕事をする税理士も多い。繁忙期は毎年年末から5月末まで続き、特に確定申告のシーズンが終わると、無理がたたって倒れることも少なくない。

ある日突然、急病になったり、はたまた急逝したりしたら大変だ。後継者が事務所内にいれば事業が継続される可能性はあるが、税理士事務所は税理士の資格を持つ者しか引き継げない。実際に後継者が決まっている事務所は少数派なのである。

10月31日(月)発売の『週刊東洋経済』11月5日号では、「秀才たちの新ヒエラルキー 高揚するコンサル したたかな弁護士 黄昏の税理士」を特集。職員数や拠点数で見た税理士法人MAP、税理士法人ランキングのほか、インボイス(適格請求書等保存方式)制度の導入などに苦闘する税理士たちの現状を描いている。

税理士資格がないと事務所を引き継げない

もし税理士が急に亡くなった場合に何が起きるか。

『週刊東洋経済』 2022年11/5号(10月31日発売)では「秀才たちの新ヒエラルキー 高揚するコンサル したたかな弁護士 黄昏の税理士」を特集。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

配偶者や家族が事務所で働いていない事例も多く、親族も職員も何をどうすればよいのか途方に暮れてしまう。他方、お通夜や告別式の準備も、進めなければならない。

案内状は顧問先にも郵送することになるが、受け取った側も困惑する。顧問先と税理士の関係は、機密事項を含む深く長いつながりがあり、すぐに代替できるものではない。それでも顧問先は税理士を探さなければならない。

月末には何件かの顧問先の申告期限が迫る。税理士会に連絡すると、所属する支部ごとに対応に差はあるが、臨時的に当月の申告の支援をしてくれることが多い。しかし、職員の雇用も含めた対応は、すべて親族が行わなければならない。税理士がどんな仕事をどこまで進めたかは、本人以外が把握するのは難しい。

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