税理士の「跡継ぎ」がいない!老大国・日本の現実 医者や政治家だけではない日本経済の金属疲労
東京・池袋でNA税理士法人を営む荒井正巳代表の元には、多くの税理士事務所から事業承継の相談が舞い込む。4月から8月まで毎月1件で計5件。うち3件は税理士が亡くなった案件だ。
75歳の税理士が亡くなったケースでは、「ご家族も事務所のことがわからず『どうしよう』と困っておられた」(荒井代表)。ほかにも、63歳や81歳で亡くなられたケースもあった。
そもそも、請求書はどの顧問先に発行したか、銀行印はどこにあるか、契約内容はどんな状況か。手がかりとなるパソコンのパスワードもわからない。時間はどんどん経過し、顧問先も仕方なく離れ始める。職員は顧問先の対応に追われつつ、自分の身の振り方を考えなくてはならない。
筆者は税理士の逝去の知らせを聞くと、一刻も早く親族と面談し、税理士事務所の承継方法を説明する。経験豊富な税理士法人と会い、契約内容の合意を取る。告別式には間に合うよう事務所の承継に関する挨拶状を印刷し、参列してもらった顧問先には挨拶をし、安心していただく。
亡くなった税理士の業務を支援するため、職員の応援をお願いし当面の業務を乗り切る。税理士を1人登録することで、その事務所は継続できることもあるからだ。ちなみに事務所でなく、税理士法人とするには、税理士2人以上の社員がいることが条件となっている。
退職金、リース契約、備品廃棄・・・苦労は山積
だが、何も手を打たなければ、顧問先はすべて離れてしまい、預かっていた山のような資料を返却ないし廃棄する作業を、顧問先ごとに慎重に行う必要がある。職員は将来に不安を抱えたまま、こうした廃業の手伝いをすることになる。
もちろんコストもかかる。遺された親族は職員への給与や退職金を支払い、事務所の原状回復のための資金、残されたリース契約の残債、備品一式の廃棄費用など、廃業のためのコストは想像以上に高い。これが現実なのだ。
会社員と違って、税理士には定年がない。税理士は万一に備え、顧問先や親族のためにも、具体的な対応を今から考えておきたいものである。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら