3期目入り習近平「強気外交」に見え隠れする本音 欧米や日本との関係修復へ動く可能性が高まる

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しかし、前者については、例えば本年8月に国務院が発行した台湾白書において、後者については昨年10月に習近平が辛亥革命110周年記念大会で同じ表現を使っている。今回の報告書にある記述をもって、中国の台湾への武力使用の可能性が高まったと判断するのは早計であろう。

 以上を踏まえれば、党大会が終わった中国の外交は、これまでの延長線の上で進められるであろう。自らを高みに置き、自国の優位性を説くような「戦狼外交」は続いていく。台湾や人権といった問題で欧米諸国との対立も続き、批判の応酬も続くだろう。

国連を含め、国際機関において中国が積極的に「人類運命共同体」などを売り込む活動も続いていく。中国が習近平の下で進めてきた「大国外交」は今後も健在であろう。

「戦狼外交」の行き詰まりを意識

同時に、今回の報告において興味深いのは、過去5年の外交の実績について、外交が必ずしも上手くいっていないことを示唆している点である。今回の報告では、中国は特色ある大国外交を進め「人類運命共同体」の構築を推進し、国際的な影響力やイメージ力を向上させた、と自画自賛する。

しかし、その成功した具体例は示されていない。むしろ実績として強調されているのは、中国の「反対」である。「一切の覇権主義と強権政治に反対」し、「いかなる単独主義、保護主義、弱い者いじめに反対」したことが強調されている。

5年前の第19回党大会の報告では、中国は特色ある大国外交を進めた結果、「我が国の経済発展に良好な外部条件を作り出した」とし、そのような成功例として、一帯一路やアジアインフラ投資銀行(AIIB)、G20サミットの開催等を挙げていた。しかし、今回の報告には、「特色ある大国外交が経済発展に良好な条件を作り出した」といった前向きな評価も見当たらない。

「戦狼外交」と言われるような強硬な外交姿勢が欧米諸国との関係を悪化させ、欧米を中心に中国企業を排除したり、中国留学生を制限したりといった対抗措置をとられ、苦しんでいる中国外交の姿を垣間見ることができる。

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