3期目入り習近平「強気外交」に見え隠れする本音 欧米や日本との関係修復へ動く可能性が高まる
5年前の報告と比べると、今回の報告における外交方針に関する記述では「反対」という用語が使われる回数が4回から9回へと増えた。それだけでなく、内容も、欧米からの人権の批判やAUKUS(アメリカ、イギリス、オーストラリアによる安全保障協力)、QUAD(日本、アメリカ、オーストラリア、インドによる戦略対話)などを意識したものが増えている。
今回の報告は、あたかも欧米諸国に対する中国の異議申し立ての場であるとでもいうような内容である。
第3に、今回の報告では、中国が発展途上国により寄り添う姿勢がより明確である。5年前の報告では、「発展途上国との団結と協力を強化する」としていた部分が、今回は「発展途上国との団結と協力を強化し、発展途上国の共同利益を擁護する」と踏み込んだ。
また、中国の成し遂げた「平和的発展」について、中国の経済成長は平和的な発展であったとした上で、「一部の国が行ったような戦争や植民地、略奪によって現代化を実現するという道は通らない」とわざわざ付言した。
途上国の代表としての位置づけを強調
過去に欧米諸国の植民地として苦しんだ歴史をもつ発展途上国を意識した内容である。分断された国際社会の中で、中国は発展途上国の側に立つのだ、発展途上国を代表してもの申すのだと言わんばかりである。
第4に、中国は、対立した国際社会の中で、国際社会の規範作りや国際的事務には積極的に参加していく姿勢を明確にした。「グローバルガバナンスへの積極的参与」は5年前の報告でも言及されていたが、今回の報告では、関与する具体的なフォーラムとしてWTO(世界貿易機関)やAPEC(アジア太平洋経済協力会議)、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの協議体)や上海協力機構などが挙げられ、国連平和維持活動(PKO)への積極的参加も明記された。
また、習近平が提唱した人類運命共同体の構築、グローバル発展イニシアティブ、グローバル安全イニシアティブについても、国際社会とともに努力するとした。経済の対外開放を進めるという具体的措置として、「一帯一路」の質の高い発展を進めるとしている。
近年、中国はこれら習近平の提案した構想を国際的に発信し、国際機関の決議の中に書き込もうとしたり、二国間文書で相手国から賛同してもらったりするような外交を続けている。中国の「特色あるイニシアティブ」を売り込もうとする外交活動は今後も続いていくことになるのであろう。
このように、今回の報告からは、欧米諸国との対立、欧米への対抗姿勢、発展途上国への歩み寄り、グローバルガバナンスへの積極的な参加といった方針が明確に見られる。しかし、これら内容は習近平の中国がこれまで進めてきた外交政策そのものであり、目新しい方針ではない。
台湾に関しても、「台湾との統一に関して武器の使用を決して放棄しない」、「祖国の完全な統一は必ず実現しなければならず、また必ず実現できる」との表現が、5年前の報告から強くなったと指摘される。
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