なぜ肥満の人にはチャンスが残されているのか。それは、糖尿病の発症に関わる要因が「遺伝・体質」ともう1つ、「肥満」だからだ。
以前から指摘されているように、肥満は糖尿病のリスク因子の1つになっている。お腹ぽっこりタイプの肥満に多い内臓脂肪からは、さまざまな生理活性物質(アディポカイン)が分泌されているが、最近になって、その1つであるTNFαという物質には、インスリンが血液中のブドウ糖を細胞に取り込むのをジャマする作用があることがわかってきた。そのため、減量して内臓脂肪を減らせば、TNFαの分泌が減り、インスリンの働きが回復する。
植木さんは、肥満の人にチャンスがある理由を別の面からも指摘する。
「インスリンには余ったエネルギーを脂肪として体に溜める働きがあります。つまり、太っているということは、インスリンはしっかり分泌されている状態、まだβ細胞のダメージが少なく、分泌するだけの能力が保たれていると考えられるのです」
こうしたさまざまな理由から、やせている人より太っている人のほうが、対策を取りやすいのだという。
「夕方 イライラする」は予備群の可能性
これまで、生活習慣病の1つである糖尿病は、まさにその名の通り不摂生がたたって生じるものだと考えられていた。だが最近では先にも述べたように、2型糖尿病でも遺伝的、体質的な要因が強く関係することがわかっている。
「2型糖尿病の場合は遺伝的、体質的にインスリンが分泌される量が少なかったり、インスリンが出るタイミングが後ろにずれていたりします。健康な人なら食後に血糖値が少し上がった段階でインスリンが十分に出るのですが、2型糖尿病の場合、出る量が少なかったりタイミングが後ろにずれたりするので血糖値が高い状態が続くことになります」(植木さん)
家族(とくに両親)に糖尿病と診断されている人がいれば、遺伝的、体質的な素因がある可能性を考えたほうがよいそうだ。
先ほど糖尿病を予防できるタイミングは健康診断で指摘されたときと紹介したが、実はこのほかに、糖尿病予備群かどうか気づくポイントがある。それは昼食や夕食前の低血糖だ。
低血糖というと、糖尿病の薬物治療をしている人の血糖値が下がりすぎてしまうことで起こるもので、治療中の人にとっては命にも関わる重大な副作用だ。健康な人では低血糖は基本的に起こらないため、もし低血糖の症状が出るようなら「本人が気づいていないだけの隠れ糖尿病予備群かもしれない」と植木さん。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら