だが、血液検査から糖尿病と診断される前のいわゆる“糖尿病予備群”の段階では、血糖値が高いだけでなく、むしろインスリンも過剰に分泌されていて、“高インスリン血症”状態になっていることがわかってきた。糖尿病予備群は、過去1~2カ月の平均血糖値を表すHbA1cが5.6~6.4%が続く状態を指す(ほかに、空腹時血糖値やブドウ糖負荷試験なども考慮する)。
植木さんは言う。「高インスリン血症は、血液中のブドウ糖を処理するために、健康な人よりもインスリンがたくさん必要になっている状態を示しています。そうやって血糖値を正常に保とうとしているのです」。
もともと糖尿病になりやすい人というのは、遺伝的、体質的な要因でインスリンが出にくい。そんな状態なのにどんどんインスリンを出さなければならない。当然ながらそれが続けば、車でいうところのオーバーヒートのようになってしまう。
「実際、膵臓にあるインスリンを出すβ細胞が死んでしまったり、インスリンを出さない細胞に置き換わったりしてしまうことがわかっています。糖尿病の患者さんを調べると、β細胞が健康な人の半分以下に減っているともいわれています」(植木さん)
残念なことに、β細胞には再生する力はないため、一度壊れると元に戻らない。そうなると血糖降下薬などで血糖値を下げる必要が出てくる。だが、これは見方を変えれば、β細胞の多くが残っているうちに何らかの対応を取れば、何とかなるということでもある。
「実際、予備群の段階でしっかり対策をとっていただければ、多くの場合、薬を使うような状況は避けられます。また現在、薬物治療中の患者さんであっても、飲み薬が不要になることもありえます」と植木さんは言う。
太った人ほど改善のチャンスがある
では、どのタイミングなら間に合うのだろうか。
「まずは、毎年、会社や自治体の健康診断受けている方で、“今年は血糖値が高いですね、再検査が必要です”と言われたタイミングなら間に合う可能性が高いです。あるいは、肥満があって高血糖を何年も指摘されている方でも、間に合う可能性はゼロではありません」(植木さん)
ちなみに、β細胞を含むランゲルハンス島は膵臓に点在しているので、どれくらい残っているかを視覚的に調べることは、今のところできないそうだ。
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