公立出身の父親がハマった「中学受験沼」の末路 息子は不登校&退学に、妻との関係も冷め切った
沼にはまる要素のひとつに“快と困難のバランスの絶妙さ”がある。中学受験は親にとって、子どもの成績が上がるという強烈な快のほかに、子どもが服従するという快もある。この快を得るために、子どもに勉強をさせるという困難がある。快と困難の層が重なるほど、沼にはまっていく。
「1年間勉強して、麻布や慶応大学付属には手が届かないことがわかりました。有名校は、問題を解くことを楽しむ子どもたちのみに門が開く。そこで、明治、青山学院など有名大学の付属を狙おうとしたのですが、そこでも国語が足を引っ張る。読解力がないと、社会や理科も伸び悩む。得意の算数も得手不得手が目立つようになっており、息子には“あと10カ月だ。そこで、今後の人生が変わる”と話しました。その頃には息子もやる気になっており“絶対に○○に合格するぞ!”と言うようになっていました」
息子は自分の体毛を抜き、円形脱毛症になった
しかし、息子は妻に対しては、「お父さんは嫌いだ。でも怖いから勉強する」と本音を漏らした。息子は朝6時に起こされ、24時近くに眠るという生活を続けていた。ストレスから自分の体毛を抜くようになり、円形脱毛症ができても、信雄さんは「将来のためには仕方がない」と思っていたという。
息子は学校を頻繁に早退したが、そのことがわかると鉄拳制裁が飛ぶとわかっていたのか、妻も息子も黙っていた。受験が近づくにつれて、父子ともに追い詰められていく。
「11月以降の追い込みの時期に志望校の“圏外”判定を受け、息子に向かって“俺の努力、時間、金をドブに捨てた”と言ってしまった。“もうやめようか”と言ったら息子は“やめない”と泣きだしたんです」
それから2月までは息子もよく頑張ったという。塾の合宿にも参加し、毎日勉強をした。1月10日以降は、学校もほとんど休ませて受験勉強に集中させた。
「会社を休むわけにはいかないので、この時は家庭教師をつけました。帰宅途中にコンビニに寄り、B4の過去問題集を当日の試験用紙に合わせてA3に拡大コピーするのが、日課でした」
そこまでしても、息子は第一希望、第二希望に落ちた。そして、都心近郊にある新興の名門校である第三希望に補欠合格した。