公立出身の父親がハマった「中学受験沼」の末路 息子は不登校&退学に、妻との関係も冷め切った

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「一応、社会的には“すごいですね”と言われる学校なのでいいのですが、不完全燃焼は残ります。そこで息子に“次は大学受験だ”と伝えました。その学校はGMARCH(学習院・明治・青山・立教・中央・法政の六大学の総称)に多数の合格実績がありますから」

だが入学すると、予想以上に授業のスピードが速い。息子は最初のテストで学年最下位レベルの成績だった。しかも行事に力を入れており「みんなで一緒にがんばろう」という校風にもなじめなかった。

「都内の自宅から1時間近くかけて通学するのも苦痛のようで、夏休み明けから学校に行けなくなりました」

信雄さんが怒ってもなだめても、息子は学校に行かない。妻は「もういいじゃない」と息子をかばった。妻と息子で話し合い、中学2年進級時に退学。地元の公立中学校に通うことになった。

家に帰るとリビングから家族がいなくなる

「元の木阿弥とは、このことですよ。中学受験に500万円以上をかけたのに、息子は地元中学に通学した。結局、あいつは怠け者だったってことですよ」

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その頃から妻と息子が結託し、信雄さんは疎外されているのを感じるようになる。

「私が家に帰って来ると、リビングから人がいなくなるんです。最初は私に合わせる顔がないからそうしているのかと思っていたのですが、2人は私を避けていた」

高校進学のときも、信雄さんは偏差値65以上の都立の名門高校をリストアップして息子に渡した。だが、すでに信雄さんの存在感はなくなっていた。

「妻からは“息子に決めさせてほしい”と言われ、単願推薦という制度で、自由な校風の私立の男子校に行っています。偏差値は62くらいですね。でも、合格実績を見ると、早慶に1~2人、GMARCHすら30人程度。あのまま私立中学に行っていれば、もっと高みを目指せたのにと思います」 

信雄さんが「わが子のために」とはまった中学受験沼は、これから家族の将来にどんな影響を及ぼすのだろうか。それが地中深くに埋まった宝物なのか、もしくは地雷なのか、それは誰にもわからない。

(筆者:沢木文) 

●沢木文(さわき あや) 
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。 
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