公立出身の父親がハマった「中学受験沼」の末路 息子は不登校&退学に、妻との関係も冷め切った

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息子からは陰で「お父さんは嫌いだ。でも怖いから勉強する」と言われていた(写真:Fast&Slow/PIXTA)
「沼にはまる」という言葉がある。何らかの対象に夢中なることを意味するが、時には、沼にはまりすぎて、仕事や家庭がないがしろにされ、崩壊寸前までいく人もいる。ライターの沢木文さんはそんな人々を取材して11月8日発売予定の『沼にはまる人々』(ポプラ社)にまとめた。同書では美容整形、筋トレ、ホストなど、さまざまな沼にはまった人々の実態が描かれているが、紹介しきれなった人も多い。AERA dot.では、そんな多種多様な「沼の人々」の事例を沢木さんの短期連載として配信する。【前編】に続き、「中学受験」の沼にはまった男性の結末を紹介する。 

仕事をしながら息子の生活と勉強を管理する日々

会社員の中野信雄さん(48歳=仮名)は、5年前に一人息子(16歳)の中学受験にはまった。

当記事は、AERA dot.の提供記事です

小5の4月から受験勉強を始め、最初は偏差値35からの出発だったが、順調に成績を伸ばした息子は半年で偏差値50に到達。小学5年の9月には難関受験に頭角を現している新興塾に転塾し、信夫さんは仕事をしながら息子の生活と勉強を管理する日々になった。

息子は国語が苦手だった。特に小説から感情が読み取れず、成績が上がらない。そこで、物語の追い方、論旨はどう展開するか、解答に結びつくキーワードをどう探すかなどを信雄さん自身が教えることにした。

「しかし、息子は半分寝ている。私が“声に出せ”と言っても反抗的な態度を取る。息子を蹴り飛ばしたのは、私が“傍線を引け”と指示したところとは別の場所にチェックをつけたとき。こっちはフラフラになりながら、必死で教えているのに、その反抗に腹が立ったんです」

次ページ受験が近づくにつれて、父子ともに追い詰められていく
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