トヨタ式「紙1枚」で問題解決!3つの大切な要素 考え抜いて変化に対応する人が求められる時代

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抽象的な文化ではなく具体的な仕組みレベルで、私なりに見出しているエッセンスがあります。

2015年に上梓した拙著『トヨタで学んだ「紙1枚!」にまとめる技術』(サンマーク出版)でも紹介しましたが、私は次の図(「空白の枠」と「テーマ」が思考整理を促す)のような「紙1枚」をベース資料にして仕事をしていました。(外部配信先では図や表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

この図を共有した理由は、「このフォーマットを埋めれば仕事は何とかなる」と言いたいから、ではありません。

トヨタ式
図「空白の枠」と「テーマ」が思考整理を促す(本書より引用)

「知行合一」を体現する

当時はそのように誤解され困惑してしまうこともあったのですが、これはあくまでも私の担当業務においては、これで概ね大丈夫だったという例です。

日々、考えに考え抜いた先にたどり着いた結晶が私の場合これだったのであり、みなさんにとっての最適な資料構成は、みなさん自身で見出していってください。

それが、実践を通じて自ら知を見出していく「知行合一(知識と行為は一体であるということ。陽明学の学説)」の体現となります。

ではあらためて、この例を紹介した理由について明記すると、多くの資料に共通する「テーマ」や「枠=フレーム」の存在を知ってもらいたかったからです。

トヨタの資料の制約は、「紙1枚」だけではありません。各項目には「目的」「現状」「課題」といった「テーマ」が記載されており、これを逸脱した内容を書くことは当然ながらできません。

加えて、各テーマの下には「枠=フレーム」がついていて、この枠内に収まるように資料を作成していく必要があるのです。

以上、「1枚×フレーム×テーマ」という3つの制約を駆使しながら、多くのトヨタパーソンは資料作成を行っていて、私もこの暗黙知を日々活用していました。「暗黙知」と書いたのは、少なくとも当時のトヨタ社内では、このようにわかりやすく言語化・標準化されていたわけではなかったからです。

この3つの制約は、私なりに見出して言語化した本質であり、手前味噌ではありますが、7年前に拙著が高い評価を得た理由のひとつは、こうした暗黙知をわかりやすく形式知化した点にあったのではないかと思います。

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