AppleWatchの質感、実は高級機械式を凌駕 著名時計ジャーナリストが大絶賛

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スマートウォッチとしての機能を訴求するApple Watchのデモは、まだ充分にこなれていないという印象を筆者は持った。キラーアプリケーションと言えるような人気アプリの登場が、今後は必要になってくるだろう。しかし、それは時間が解決すると予想している。Apple Watchがここまで耳目を集め、アップル自身も開発者にプロモートしていれば、iPhone用アプリの開発者たちがApple Watchとの連動機能に注目することは間違いないと思うからだ。

問題はそこではなく、電子機器としてのApple Watchはは、まだ未成熟な部分を多く残していることだ。将来はよりこなれた電子機器になっていくかもしれないが、電子機器としての完成度を上げていくプロセスは、これからの進化に可能性を委ねている。

NFCを利用したアップルの決済システム「Apple Pay」は日本で稼働していない。というよりも、非接触ICを用いた決済システムは日本の方が数年、インフラ整備の面でもコンシューマへの普及でも進んでおり、Apple WatchにもNFCが内蔵されており、わざわざiPhoneを出さなくても決済が完了しますよ。他のNFCアプリケーションとも連動しますよ。そう言われても、いまひとつピンとこない読者の方が多いだろう。

将来、NFC対応iOSアプリケーションがApple Watchと連動することが、とっても素晴らしいと思える日もくるかもしれないが、現時点において日本では絵に描いた餅でしかない。

とはいえ、それでもiPhone向けに大量に開発されているアプリは、Apple Watch対応を徐々に進めていくだろう。基本的な操作性に関して、だれも異を唱えないほど完成している点はもちろん、アプリの充実度も心配していない。”今何ができるか”はもっとも重要なチェックポイントではないと思う。

「賞味期限」という問題

初代のApple Watch購入を検討しているユーザーが関心をはらうべきはApple Watchの賞味期限だ。

機械式腕時計は、もちろん製品の質にもよるが、最低でも数年単位、そこそこの製品でも数10年、あるいは一流品ならば100年を越えて使われる腕時計となり得る。だからこそ、その価値が安定的に認められている腕時計は、まるで通貨のように安定した価値を持つ。では、そうした定番の価値ある高級腕時計と比べた時、Apple Watchはどのぐらいの期間、商品としての鮮度を保てるだろうか。

高品質なケースとバンドを剥いだとき、残るのは電子機器としてのApple Watchである。Apple Watchを腕時計として評価した際の高評価に対して、納得しつつも釈然としない理由はそこにある。

5万円の腕時計を10年使うならば安いが、1~2年で鮮度を失うようだと高く感じる。あくまで例え話だが、1年後に3日間バッテリーが持続する第2世代のApple Watchが発売されたならば、18時間しか連続使用できない第1世代は、とたんに色あせてしまうだろう。機械式腕時計の世界には、このように技術ブレイクスルーによってあっという間に前世代の製品が色あせるというリスクが極めて少ない。良い腕時計に対する評価は、極めて安定しているからだ。

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