「円安のデメリット」ばかりが叫ばれる背景事情 円安が物価上昇の要因というのは間違いないが…

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日銀の黒田東彦総裁(写真:Jun Hirata/© 2022 Bloomberg Finance LP)
円安のデメリットばかりを強調して報じられることが少なくありません。経済アナリストの森永康平氏の著書『大値上がり時代のスゴイお金戦略』から一部抜粋し、円安のメリットとデメリットを両面から解説します。

円安のメリットとデメリット

物事にはメリットとデメリットがあります。これは当たり前のことだと思いますが、意外とこのことを理解しないままに議論をしようとする人がいます。特にSNSを見ているとまともに議論ができない人が多いなと思うことが多々あります。黒か白か、ゼロかイチか、という議論ばかりして、揚げ句の果てには人格攻撃を始めて終わるというものです。

何事にも黒と白という両極端があって、実はその間の灰色の部分に最適解があり、しかもその最適解は周辺環境の変化に応じて変わっていくということを頭に入れておかないといけません。

あえて意図的にメリットかデメリットの片方にだけ焦点を当てて、世論を操作しようとする有識者やメディアも存在しますから、情報があふれる現代のネット社会では情報を選別するメディアリテラシーも重要となります。

少し話がそれましたが、なぜこのような話をしたかというと、円安についてもメリットだけを主張したり、デメリットばかりを喧伝する人やメディアが多く目につくため注意喚起したかったからです。私たちはつねに冷静に物事を捉えなければいけません。それでは、まず円安のメリットについて考えてみましょう。最もよく耳にするのは「円安は輸出企業に追い風になる」というものではないでしょうか。その理由はステップを踏んで考えれば理解できるはずです。

たとえば1ドル=100円のときに、国内で100万円で売っているものをアメリカに輸出した場合、いくらで売ることになるでしょうか。ここでは議論を簡単にするために、関税や輸出にかかるコストなどは一切考慮しないものとします。1ドル=100円ですから、国内で100万円で売っていたものはアメリカでは1万ドルで売ることになります。

それでは、少し極端ですが計算を簡単にするために1ドル=200円と円安になった場合はどうでしょうか。国内で100万円で売っているものはアメリカでは5000ドルで売ることになります。この結果、作っているものは何も変わっていないのに、アメリカ人から見ると値段だけが半額になり、とてもお得に見えるわけです。

また、この理屈を少し変えて考えると、アメリカで100ドル稼いだ企業が円安になったタイミングでドルを円に転換して国内に資金を戻すと、円換算したときに稼いだ時点よりも多くの金額を手に入れることができるのです。このように、為替の影響で出た利益を「為替差益」と呼んだりします。

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