「円安のデメリット」ばかりが叫ばれる背景事情 円安が物価上昇の要因というのは間違いないが…

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その結果、飲食店や宿泊施設などでは営業ができなくなったり、はたまた工場でラインが停止したり、港湾や空港も利用頻度が落ちたことで、これらの産業に従事していた一部の方たちが解雇されてしまいました。その後、コロナに対する知見もたまり、コロナとの共生方法を見出した各国が徐々に"ウィズコロナ"という発想のもとで経済活動を再開したところ、一気に需要が回復したわけですが、コロナ禍で生じていた人手不足、半導体不足、コンテナ不足など、あらゆる供給制約が生じていたことで、物価が一気に上昇しました。

そこに加えて、2022年2月下旬にロシアがウクライナに侵攻すると原油価格をはじめ、食料や非鉄金属など多くのエネルギー・資源価格が上昇しました。つまり、今回の物価高というのは景気が良くて旺盛な需要に供給が追いつかないことで物価が上昇したということではなく、あくまで人手不足や資源不足によって供給が減少し、一方でエネルギー・資源価格が上昇することでモノを作る際のコストが上昇し、それが販売価格に転嫁されたという流れなのです。

物価高にはいくつも要因がある

また、日本にはさらなる値上がり圧力が発生しました。それが円安です。日本は食料自給率もエネルギー自給率も低く、その多くを海外からの輸入に依存していますが、すでに見てきたように、円安になれば海外から輸入したモノの値段(輸入価格)は上昇します。それを価格転嫁すれば、当然ながら国内の物価上昇圧力となるのです。このように多くの日本国民を苦しめている物価高にはいくつも要因があるのですが、そのなかでも最も影響が大きいのはエネルギー・資源価格の上昇です。そして、次点として円安という為替要因がくるわけです。

それにもかかわらず、「円安のせいで物価が上昇して国民が苦しんでいる!」として、いわゆる「悪い円安論」を喧伝する人が多いのですが、タチが悪いと思うのはそれ自体はウソではないということなのです。たしかに、円安が物価上昇の要因であることは間違いありません。しかし、それだけが理由ではないうえに、円安のメリットも同時に考えなければフェアではないでしょう。

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