「円安のデメリット」ばかりが叫ばれる背景事情 円安が物価上昇の要因というのは間違いないが…

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たとえば、内閣府が2018年9月に公表した「短期日本経済マクロ計量モデル(2018年版)の構造と乗数分析」のなかでは、10%円安になった場合、輸入物価が上昇することで初年度は消費が0.01%だけ下押しされるものの、実質GDP(国内総生産)は0.22%押し上げられると試算されています。

特に円安のプラス効果は2年目から顕著となり、それは3年目にも継続されます。この押し上げ効果を生じさせるのは設備投資の回復です。同様の結果は、OECD(経済協力開発機構)が2010年の5月に公表した「The OECD's New Global Model」というワーキングペーパーにも記載されています。

本書は経済学の専門書ではありませんから、彼らのシミュレーションのモデル式や変数について解説はしませんが、筆者の個人的な意見であるだけでなく、多くの専門家も同様の見解を示していることを共有しておきたかったのです。

円安が経済全体に好影響を与える理由

難しい話をしなくとも、円安が経済全体に好影響を与える理由はわかるかもしれません。たとえば、いわゆる円安の恩恵を受ける輸出企業には大企業が多く該当します。大企業は単体で商品すべてを製造していることは稀で、多くの場合は中小零細企業と取引をしています。大企業が円安を背景に業績を向上させることで、中小零細企業にも一部の恩恵が流れてくることは期待できます。

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ここで、「一部」とか「期待できる」としたのは、筆者自身がいわゆる「トリクルダウン」という考えを心から支持していないからです。

トリクルダウンというのは、「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富がこぼれ落ち、経済全体が良くなる」という考え方です。現実世界では一部の富裕層が富を独占して格差が拡大するという現象も起きています。

しかし、大企業が儲からないなかで、大企業と取引をする中小零細企業が儲かるということは考えにくいですから、少なくとも円安で追い風を受ける大企業が儲かることで増加した売り上げの一部が中小零細企業にも波及し、結果として日本経済全体を成長させる可能性はあるのです。

森永 康平 マネネCEO/経済アナリスト

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もりなが こうへい / Kohei Morinaga

証券会社や運用会社にてアナリスト、エコノミストとしてリサーチ業務に従事した後、複数金融機関にて外国株式事業やラップ運用事業を立ち上げる。業務範囲は海外に広がり、インドネシア、台湾、マレーシアなどアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、各法人のCEOおよび取締役を歴任。現在は法律事務所の顧問や、複数のベンチャー企業のCFOも兼任している。日本証券アナリスト協会検定会員。株式会社マネネTwitter

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