「舞いあがれ!」絶賛子役⇒福原遥の絶妙リレー  あの「まいんちゃん」がNHK朝ドラで大人の俳優に

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「つらさと明るさを行ったり来たりする表現を幼少期でやるのはかなり高度なこと」という評価はまさにそのとおりで、浅田の演技は注目に値するものだった。例えば、すぐ熱を出して寝込み、内向的でうつむいてぽそぽそとしゃべっていた舞が、五島列島で祖母から自分のことは自分でする(食事のあと食器を洗うなど)ことを学び、同時に、自分の思ったことを口にできるようになったときには、顔をまっすぐあげて晴れ晴れとした顔ではきはき語るようになる。別人のように変わる演技が鮮やかだった。

だが、浅田の高度なところはさらに先を行っていた。うつむいてぽそぽそしゃべっているときにもただおとなしい子ではなく、うちに秘めた強い心が垣間見えるところなのだ。大人の俳優だって陰陽明確に切り分けるのではない、どちらも交ざったグレーな部分の表現は難しい。それをわずか8歳で体得しているのだからおそるべしである。

浅田に限らず最近の子役は皆、実力が高い。子供編とはいえ堂々と主演を張れる朝ドラでその実力は遺憾なく発揮される。例えば「おちょやん」(2020年後期)のヒロインの子供時代を演じた毎田暖乃。働かない父親の代わりに働いたすえ、口減らしのために奉公に出されるが、決して弱音を吐かない。でも時々、竹やぶで母の残したビー玉を月にかざして、しんみりという、人間の多義性を見事に演じていた。

大人の女性の身振り手振りを完コピ

毎田は子供時代の出番が終わったのち、終盤、別の役で登場したときには、がらりと違う雰囲気で登場し、どれだけ引き出しを持っているのか驚いた。その後、「妻、小学生になる。」(2022年、TBS)では石田ゆり子演じる大人が乗り移った小学生を演じたときも、大人の女性の身振り口ぶりの完コピは大絶賛ものだった。

子供は天真爛漫という単純なイメージをぶち壊し、人間の感情の機微を演じることのできる天才子役は、時代時代に現れる。「舞いあがれ!」ではヒロインの幼馴染・久留美を演じた大野さきもどこか憂いある雰囲気が注目された。

主人公でいえば、子供時代が長く6週あった「おしん」(1983年)の小林綾子。おしんと言えば小林綾子というほどの人気だった(小林と田中裕子と乙羽信子と3人が各世代を演じた)。朝ドラ以外では、「同情するなら金をくれ」の名セリフ(「家なき子」)の安達祐実や、マル・マル・モリ・モリ♪と歌って踊っていた愛くるしい(「マルモのおきて」)の芦田愛菜など神童的な存在がいる。

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