無責任で人任せの息子を持った親の「介護の顛末」 認知症とがんを患う母親、自宅で転倒し骨折…

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前回の記事(家族ががん終末期、いつ介護休暇を取得すべきか)でもご説明したとおり、制度や介護保険サービスを利用しながら、仕事と介護を両立している人はたくさんいます。大切な家族のためにも、「誰かがやってくれるだろう」という他力本願な考えではなく、いざというときにはできるだけ関わって支えようとする姿勢でいてほしいと思います。

実際、家族が遠方に住んでいても、大事な局面でしっかりと本人を支えられたら、適切なタイミングでケアにつながるケースが多い印象です。

兄弟が連携して――Bさん夫婦の息子

千葉県在住のBさん夫婦(80代)。認知症で関節の病気を持つ妻が「要介護5」で、自分で意思決定するのが困難です。そんな妻を夫が支えながら、2人で暮らしていました。私が在宅医として関わるようになったのが、今年に入ってから。妻が足に炎症を起こして動けなくなったのをきっかけに、訪問診療が始まりました。

やがて妻の症状は落ち着いたものの、今度は夫の体調が悪そうなのが気になりました。かかりつけ医から処方された薬を飲み続けていますが、私は夫が何か大きな疾患を抱えているのではと感じました。

Bさん夫婦には、50代と40代の息子がおり、兄は他県、弟は父母と同じく千葉県に住み、会社員として働いています。私が「お父さんの体調が悪そうだから、一度病院で検査したほうがいいと思う」と伝えると、2人はすぐに駆けつけ検査に連れて行ってくれました。その結果、胃がんの末期で、治療の余地がない状態だと判明したのです。

それまで、妻の在宅療養に関することは、夫が判断して進めてきました。しかし夫のがんが発覚したなかで、これまでどおり、夫が妻を支えながら自宅での生活を続けるのは困難でした。

このとき、「残された生活をどう過ごすか」という夫の意思決定を支えたのが、2人の子どもでした。「コロナ禍の今、夫婦が別々の施設に入れば、なかなか会えなくなる」「余命が限られているなら、2人が一緒にいたほうがいい」と、両親が一緒に入れる施設ということで、私たちが運営する緩和ケア専門施設「メディカルホームKuKuRu」への入所を決めました。

メディカルホームKuKuRu
メディカルホームKuKuRuの窓から(撮影:向日葵クリニック)
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