無責任で人任せの息子を持った親の「介護の顛末」 認知症とがんを患う母親、自宅で転倒し骨折…

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がん終末期で在宅ケアを受けている場合、自宅療養中に急に病状が悪くなったり、入院が必要になったりしたときに、速やかに入院して治療につなげられるよう、バックベッド(後方支援病床)の登録を、早い段階でしておく必要があります。これは入院ベッドが確保できない事態を防ぐため。

バックベッドは、希望の病院を本人や家族が選択したうえで、登録前に病院を受診しておく必要があります。そこで息子さんにも、在宅での緩和ケアを始める段階から再三にわたって、病院を決めるようにお願いしていましたが、毎回「そちらでやってもらえないんですか?」「そのうち時間ができたら行こうと思います」という、にべもない返事が続いていました。

仕事で動けないので無理です

1人での生活が困難となり、ケガによる骨折の可能性もあった今回、改めて息子さんに受診の相談をしたところ、やはり「仕事で動けないので無理です。救急車とか呼べないですか?」との返事。救急車を呼ぶ状態ではないことを伝えても、「でも動けないんです」の一点張りです。

結局、緊急時に滞在できる緊急ショートステイで空いているところを、担当のケアマネジャーが必死で探しました。さらに、本来の業務範囲を超えて、自宅でショートステイの準備を行ったり、施設までの移動に付き添うなど入居までの細々(こまごま)としたサポートを行ったりしなければなりませんでした。Aさんの息子さんのように、家族が「完全に丸投げ」という状態では、私たちサポート側も困ってしまいます。

Aさんのように、本人が意思決定をしにくい場合には、家族が判断し、サポートのために動く必要があります。そしてそれが難しいときは、何か別の策を準備しておかなければなりません。それは家族が遠方に住んでいても、同じです。私たち在宅ケアを支える医療従事者や介護従事者は、あくまでもサポートをするのが役割で、意思決定に関わることはできません。物事を判断するのは、他でもない本人や家族です。

中村明澄医師
診察準備をする筆者(撮影:向日葵クリニック)

ところがなかには、その自覚が抜け落ち、「誰かが決めて動いてくれる」「やってもらって当たり前」と考えているケースが見られます。現役世代の家族だと「忙しくて手が回らない」と言いたくなるかもしれません。またAさんの息子さんのように、面倒がって関わろうとしなかったり、主体が本人や家族ではなく、サービス提供者側だと誤認してしまったりするケースもあります。

しかし、本人が意思決定できない場合、家族が関わらないで困るのは患者さんです。そのせいで適切なケアにつながらないケースもあります。

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