変われなかったロスジェネ世代に感じる深い失望 なぜ各種ハラスメントは撲滅に至らないのか

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一時は不倫ネタであふれかえっていた週刊誌に、今や企業幹部のハラスメント不祥事が数多く載っている。これはおそらく、週刊誌の人権意識が向上したからではないだろう。そうした記事が多くの読者に読まれるからだ。

ハラスメントや差別にはもううんざりだと思っている人が多いことの表れであり、自分は大丈夫だろうかと不安を覚えてつい記事を読んでしまう人が多いことの表れでもあろう。

この世界をよりマシなところに

ESG投資などで市場からの眼差しが変わったことを理由に、企業が体質改善を急ぐ動きは歓迎すべきことだ。だが、所詮は市場向けの建前にすぎないという認識では何も変わらない。

「内輪なら何を言っても大丈夫」「本音をさらせば親密になれる」という感覚でいると、早晩問題を起こして淘汰されることになるだろう。つまり、本気で価値観と行動を変えないといけないのだ。

これを読んで「また優等生ぶって……いっちょネットに書き込んでやろうか」などと思った人は、ぜひそのエナジーを別の思考に振り向けてほしい。

なぜあなたはDE&I(多様性と公正と包摂性)やハラスメント批判やフェミニズムやCO2削減目標や、それらを支持する若者などに、いら立ちと偽善を感じるのか。なぜそれらはあくまでも“優等生的な建前”でしかなく、自分ごとの大切な課題にはならないのか。あなたの身近には、あなた自身とあなたの住む世界のことを、本気で大切に思ってくれる人がいるだろうか。そのために小さなことでも行動してくれる人はいるだろうか。

そしてはたしてあなたには、この世界をよりマシなところにする力はないのだろうか。会社に言われて会議につけていくあの丸い虹色のバッジを見つめながら、考えてみてほしいのだ。

小島 慶子 エッセイスト、タレント、東京大学大学院情報学環客員研究員

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こじま けいこ / Keiko Kojima

1972年、オーストラリア生まれ。エッセイスト、タレント。東京大学大学院情報学環客員研究員、昭和女子大学現代ビジネス研究所特別研究員。学習院大学卒業後、TBSに入社。アナウンサーとしてテレビ、ラジオに出演。2010年に独立後は、各メディア出演、講演、執筆など幅広く活動。2014年、オーストラリアに教育移住。自身は日本で働きながら、夫と二人の息子が暮らすオーストラリアとを行き来する生活を送る。著書に『解縛』(新潮文庫)、『不自由な男たち』(田中俊之氏との共著、祥伝社新書)、『おっさん社会が生きづらい』(対談集、PHP新書)など。
 

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