変われなかったロスジェネ世代に感じる深い失望 なぜ各種ハラスメントは撲滅に至らないのか

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団塊ジュニアが子ども時代を過ごしたのは、日本経済の黄金期。しかし誰もが「明日は今日よりも豊かになる」と信じることができた“成長する日本”はすでに歴史上のものになった。

21世紀になってからは、数値上の好景気がどれほど長く続こうとも、なんたらミクスで成長を何度ブーストしようとも、実感される足元の地面はいつも下り斜面で、もはやほとんどの人が平地を知らない。労働力不足に直面した国はようやく不遇な中年人口を放置してきたことに気づき(遅すぎ)、「人生再設計第一世代」というおためごかしのネーミングをして再雇用に動き始めている。

「ロスジェネ怖え」の中で…

厳しい就職氷河期を経験したロスジェネ世代は、努力家で仕事の手を抜かない傾向があると言われる。これは強みであると言えよう。ところが20代は「ロスジェネ怖え」と感じているという記事を読んだ。ロスジェネ世代の価値観や言動は、若い人たちにとってはハラスメントにもなりかねないのだ。

ハラスメントは「権力の勾配」があるところに生じる。やった側(権力を持っている側)がどういうつもりだったかではなく、ハラスメントを受けた側(弱い立場にある側)がどのように感じたかが重視される。つまり「そんなつもりじゃなく言ったこと」「普通だと思ってやったこと」が、相手にとっては暴力になりかねないということだ。

加害者とされた側は、問題になった言動が日常的な習慣になっているので「なんで急に責められるんだ?!」と心外に思い、むしろ自分こそが被害者だと根に持つこともある。

こうした心理に多少なりとも思い当たる人は、読者の中にもいるだろう。それはおそらく、自身の立場が変わったことに気づいていないのだ。そして世の中が変わったことにも。

今から20年以上前、まだなんの権限もなかった若い頃には、上の人たちと一緒になってなんでもありの内輪ネタで盛り上がったはずだ。上司たちは昼間の会議ではまともなことを言っても、夜の酒席ではそれを打ち消すようなあけすけな発言をし、本音開示で仲間の“信用”を得る。そうやって互いに二枚舌を許容し、ゲスい本音を握り合って、昼間の建前の世界を回していた。

肝心の話は飲み屋とタバコ部屋(今ならサウナか)でするもの。そんなやり方を当たり前と思って年齢を重ね、ある程度の権限を手にした現在、「コンプラやらポリコレやらを真に受けるやつは間抜けだよね。どいつもこいつもSDGsとか人権とか言い出してほんと、めんどくさいよ……」と言い合える相手こそが、信用できる仲間だと思っていないだろうか。

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