あと、奨学金という存在は働き方にも影響してくるんですよ。最初に就職した会社を辞めた要因のひとつに、奨学金の完済がありました。当時はウェブマンガの知見を得たかったのですが、転職することで給料が下がるのがわかっていたんですよね。でも、『足枷がひとつ取れたな』という気持ちになっていたので、踏み切ることができたんです」
さらに、奨学金を借りたことによって、親との関係性もシビアに考えるようになったという。
「奨学金を借りている学生時代、まだ奨学金の返済が始まっていないときから、ずっとどこかで『返してくれないんだろうな』と、疑っていました。別に嫌いというわけでもないし、なにか裏切る確証があるわけではなかったのですが、やっぱり本来自分が使うべき奨学金をコンビニの運転資金に使っているわけなので、両親のことが信頼できなかったんですよ。
だから、高校生で奨学金を借りるときに口約束で『借りた分は返してよ』とは言いましたが、親子とはいえ念書ぐらい書かせてもよかったかなと、今は思います。結果的に両親はその口約束を守って返してくれましたし、自分も進学できたのですが、それは両親を信頼できたからというわけではなく、『高校生の自分には、それしか選択肢がなかった』からなんですよ」
奨学金を借りたことで人生の選択肢が増えた
さすがに、本来は学費のために充てるべきお金を経営難の実家に使ったことに長年、気が引けているのだろうか……。両親に奨学金を使われたことには思うところがあるが、それでも谷山さんは奨学金制度そのものは否定していない。
「自分は奨学金を借りたことで、人生の選択肢が増えたと思っています。だって、今いる出版社のエントリー条件は四大卒ですからね。逆に言うと『奨学金を借りない』選択肢しかなかったら、自分の人生は大きく違っていたと思います。
奨学金を『足枷』という表現をしたように、常に借金と向き合っていて、自分のやりたいことのために投資し、リターンを得てきたという自負はあります」
借金と向き合い、自分の将来に投資し、リターンを得る……その先で谷山さんは、自分への自信を手に入れた。
ちなみにだが、谷山さんの両親は、3店舗目にしてようやく経営を軌道に乗せ、すでに店は15年ほど続いているという。谷山さんが手掛けたマンガ雑誌も、入り口近くの本棚に並べられているのだろうか。
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