仕事の休憩に効くのは「おやつ」と「雑談」どっち? 科学的に正しい「脳パフォーマンス」の高め方

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根本的な問題解決などに欠かせない要素は、現在の思考と過去の経験を結びつける能力だが、これには前頭葉の実行領域と脳の記憶領域のやりとりが必要になる。オープンな思考の時間がないと、こうした領域同士のやりとりは、精神疲労や認知の過負荷によって、ともすれば損なわれてしまう。

だが、日常のルーティンにホワイトスペースを組み込むと、前頭葉の再編成と再活性化が促され、ニューラル処理の速度が増して生産性や創造性がアップする。安静時に脳のMRIスキャンを撮ると、脳内のデフォルト・モード・ネットワーク(脳の活動の統括センター)が、驚くほど複雑に活動しているのが見てとれるはずだ。この活動は、洞察力、つまり物事の本質を見抜く力や、記憶力や創造力と関係している。

したがって、脳が疲れているときに戦略的小休止をとれば、新鮮な視野を得るのに必要な記憶の関連づけをするチャンスを、過負荷状態の脳に与えられる。これが創造性を高めてくれる。マラソンのきつい下り坂で給水したときのように、視界が一気にクリアになるのだ。

注意を逸らして脳をリセットする

ところで、なぜ小休止は、働く人間のスタミナやパフォーマンスにこれほど重要なのだろう? 

それを説明しているのが、科学誌『コグニション』に発表された研究である。この研究では、被験者を4つのグループに分け、それぞれ同じ作業を50分間してもらい、各グループの集中力がどのくらい持つかを調べた。ただし、1つのグループだけは、途中で作業の手を止めて、ほかのことに注意を二度そらし、また作業に戻るよう指示された。

50分間の作業中、4つのグループのうち3つは、明らかに集中力が低下した。ところが残りの1つ、つまり注意を二度そらしたグループは、時間がたっても集中力が落ちなかった。

ここからわかるのは、作業の合間に少し頭を休ませるだけで、長時間集中する力を劇的に高められるということだ。たとえそれが「何もしない」休みではなくても、「目的の活性化と非活性化を行うことで集中力は保てる」と、研究を主導したアレハンドロ・レラスは私に語った。要は、目の前の作業から離れると脳がリセットされるので、より良い状態で作業に戻れるわけだ。

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